第90話 コル家の血筋
ルドルフがミリーに初めて会ったのはルドルフが十九歳の時でミリーは九歳だった。家庭教師から逃げて広い庭の片隅で一人で詩を書いていた時に迷子になったミリーに出会った。ルドルフはその時、花の精霊が自分の前に現れたと考え、出会って事の感動で詩を書きあげてしまった。その後、ミリーの成長を感じながら書いた詩集はルドルフの名前を伏せる事を条件に出版され、超絶大ヒットした。ルドルフのペンネームのガリバーは出版社は一切情報を出さない、そのミステリアス性も相まって人気がある。ウルルスもその詩集をフェイが読んでいるのを見たことがあった。
「まぐれですよ、本なんて人生を一冊にまとめれば誰だって出せます」
「いやいや、謙遜が過ぎるだろ。もう三冊出してるだろ、お前」
「私はミリーの事を考えると自然と詩が浮かびます。引き裂かれていたら悲しい詩集ばかり出したでしょうね」
「ルドルフ様は大袈裟ですね……」
ミリーは酔いが回ったのかトロンとした目でルドルフを見つめている。
「三冊目に切ない詩集が多いのはそのせいなのかしら?」
「そうですね。私は婚約者も持たずにこの歳までいましたから、父上や妹たちに随分と責められたんですよ。見合いの席ではミリーの事を考えてました。全部断ったので随分とコル家の評判を落としましたね」
「一途だな。そのまま独身を貫く気だったろ。父親が死ぬまでは」
「そうですね。父上が亡くなって、相続争いが始まり、家を捨てようと思い至りました」
「駆け落ちを考えなかったんですか?」
「それは責任を放棄した一番やってはいけない事だと思ってましたね」
ティアの質問に答えるとルドルフはワインを口に運ぶ。
「変な所で責任感のある奴だな。成人前の少女を襲ったのに……」
「私だって我慢の限界はありますから、優しいお兄さん的ポジションで終わらせたくないって思いもありました」
「コル家は結構色んな貴族の令嬢と会った思うんだがなぁ」
「そうですね。容姿の綺麗な子は多かったですが、私が恋焦がれたのはミリーでしたから」
「少女趣味なんですかね、コル家の人って……」
「否定出きないな、実例が二人も居るし、父親もそおいう趣味だったかもしれん」
「兄上の母親は年若く兄上を産んだって聞いてます。年齢は誰に聞いても言ってくれなかったですね」
「それならなんで私はあの時、手を出されなかったのかしら?」
「匿ってくれてる家の人に迷惑掛けたらまずいだろ……」
フェイとベスの家にウルルスが匿われていたのはもう十年以上前の話だ。
「変な所で義理堅いわね」
「ベスも怖かったし、現役バリバリだったからな」
「あ~、納得ね。敵に廻したらウルルスは今ここに居ないわね」
「ベス様の現役はそんなにやばかったんですか?」
「情報屋のトップよ? やばいなんてレベルじゃないわよ」
「はいはい、話を戻しますよ。ルドルフさんはミリーさんのどこに惹かれたんですか?」
「全部って言いたいけど、そんな質問じゃないよね。強いて言えば雰囲気かな」
「雰囲気ですか……。意外な答えが返ってきました。ご主人様は私のどこに惹かれました?」
「目だよ。皆に言える事だが強いくていい目をしてる。そこに惹かれれたかな」
「さあ、夜も遅いですし帰りましょう!」
「ティアは発情しただけだろ……」
「そんなことないです。お邪魔虫は早く退散しないと!」
「「「「ああ、そういうことか」」」」
ミリーがうつ向いてしまう。首まで真っ赤だ。ルドルフはそれを見て合点がいったようだ。
「じゃあ、また明日な、ルドルフ」
「「「「おやすみなさい」」」」
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