第81話 ルドルフ・コル
ルドルフ・コルはウルルスの三個下の異母兄弟だ。くすんだ銀髪なのは共通しているが、顏は似ていない。どちらもそれぞれの母親似なのだ。
リビングの応対ソファーで向かい合う。家人たちには部屋にいるよう頼んだ。
「兄上は若々しいですね。羨ましい限りです」
「お前だって活性の魔法は使えるだろ?」
「常時発動なんて出来るのは兄上ぐらいですよ」
ベスの知らせから三日後にルドルフはやって来た。ウルルスは家を出てから一度も家に帰っていないが、面影があったのでルドルフだとすぐに分かった。
「表立って探す事が出来ず、時間が掛かりました」
「賞金首だからな、俺は」
「ええ、賞金稼ぎの消息の消えた場所と情報屋のお陰で何とか居場所が分かりました」
ベスは出来るだけ時間を引き延ばしてくれたようだが、賞金稼ぎの動きを止める事は出来なかったようだ。
「本題に入りましょう。家に戻って下さい、兄上」
「嫌だ。お前が当主を継げ」
「私には好きな子がいますが当主を継いだら身分違いで結婚できません。家を継ぐのは嫌です」
「お前も家を捨てると?」
「その通りです」
愛の為に家を捨てる覚悟があるなら応援してやりたい。しかし、他の兄妹に家を任せるのは不安が残る。
「まあ、家なんていずれは潰れるもんだしな」
「そうですね。レプス家の当主も行方不明ですし」
「ああ、そいつは俺が殺した」
「そんな気がしました……」
「姪を手に入れる為に姉夫婦を殺すような外道だからな、ちゃんと敵討ちさせてやったよ」
「それはどう云う事ですか?」
「奴隷に落ちたレプス家の令嬢を俺が買っただけだな」
「それは、複雑ですね……。その令嬢は元気なのですか?」
「今は二人きりで話したかったんだが、会うか?」
「ぜひ」
リビングを出て自分の部屋で待機していたティアを呼びに行く。
「ご主人様、どうしたんですか?」
「ルドルフがティアに会いたいそうだ」
「はぁ、よく分かりませんが、ご主人様がお望みなら……」
ティアを連れてリビングに戻る。
「ティア・レプスだ。奴隷に落ちた時に会ったからいつもはティアと呼んでる」
「ティアです」
「なるほど。レプス家の当主が欲しがりそうですね……。黒い噂も真実だったと思えます」
「魔法士の家では有名だったのか?」
「それなりに、レプス家の当主の趣味は特殊ですし」
「特殊、ねぇ」
「複雑な気分です……」
既に手を出しているウルルスは苦笑いするしかない。
「それで、いつ解放するのですか?」
「いや、両想いだし解放する気はないんだが……」
「レプス家も潰れますね……」
「お前もこの町に越してくればいい、身分違いなんてこの町ではザラだぞ?」
「それは……、考えておきます。私一人で決める事では無いですし」
「そうだな。良く相談するといい」
「今度はお酒でも飲みながら話したいですね」
「ごたごたが片付いたら、いつでも来るといい」
「そうですね、近いうちにまた来ます」
ウルルスとルドルフは固い握手を交わした。身を潜める必要は全く無かったなとウルルスは思った。ルドルフの身の安全を考えるなら跡目争いが終わるまで護衛した方がいいなと決め、実家に帰ることにした。
ルドルフ一人くらいなら担いで逃げられるだろう。ティアとロイどちらかをルドルフの想い人の護衛に付かせたいところだが、身重のフェイとローガンを残して行く訳にはいかない。どうしたものか……。
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