第78話 賞金稼ぎ
ウルルスの賞金首の額は現在、翠金貨八十枚である。日本円に直すと約八十億円だ。末代まで遊んで暮らせる額である。一獲千金を狙う賞金稼ぎや武力に自信がある実力者に常に命を狙われている。
賞金稼ぎは大抵ロイとティアの師弟タッグに半死半生にされて、二度と来なくなるのだが、実力者の場合はウルルスが撃退している。その事でじりじりと賞金が上がっているのだが、有名税だと割り切っていた。
「今日の賞金稼ぎは拳打のみで倒してみましょう!」
「無茶言いますね! 私か弱い乙女なんですけど!」
「非処女が何言ってるんですか……」
「恋する女の子はいつでも乙女なんです!」
ウルルスが居ないとツッコミ役が居ない。そのウルルスは副町長の仕事で留守にしている。
「大変だティアちゃん。今回は数が多い!」
ティアのファンクラブの一員が肩で息をしながら報告してくる。町内で一番足が速い者が賞金稼ぎが来ると仕事を放り出して報告にやって来くる。賞金稼ぎ達はほとんど娼館に寄ってから来る。命を賭けた勝負を前に士気を上げる為だ。ほとんどの男が決まって、
「大金が入ったら、迎えに来る」
そう言い残して、二度と戻って来ない。この町の娼婦はこの事を影で死亡フラグと呼んでいる。そのほとんどの男たちがティアの魅力の前では実力の半分も出せずに屠られる。
「サッサと片付けて、ご主人様を迎えに行かないと……」
「なんで師父は墓守さんの所で仕事をするのでしょう?」
「家でくつろぎたいからでしょ、師匠はそんな事もわからないのですか?」
「ちょっと疑問を口にしただけです!」
「あの~。今回は四十人近いんだけど……」
報告にやって来たファンクラブの男が忠告するも二人は聞いていなかった。
「どちらが多く倒せるか勝負しましょう!」
「へ~。何が望みですか?」
「夜の営みに私も参加させて下さい!」
「師匠、後ろから攻撃魔法撃っていいですかね?」
「躱すので問題ないです!」
武装した四十人近い賞金稼ぎ達の未来は暗黒より暗かった。
一心不乱に副町長の仕事をしていたウルルスは近づいてくるティアの気配に気づいて、一階まで降りた。
「どうした? 仕事が終わったのか?」
「墓守、本業の時間みたいだ」
「また、馬鹿な死体の為に穴を掘るのか……」
深々とため息を着くとスコップを用意する。
「それが墓守ってもんだろ」
「違いないが、今回は何人だ……」
「今回は俺も手伝った方が良さそうだな。何故かそんな気がする」
「暗殺者の勘か?」
「俺が遺体を運ぶから、墓守は大き目な穴を掘っといてくれ」
「分かった。こういう時、身体強化魔法は便利だな」
「使えるだろうとは思ってたけれど……」
謎多き墓守。しかし、余計な事は言わない聞かない主義のウルルスは台車を取りに外に出た。ちょうどティアと鉢合わせになる。
「ご主人様、やっぱり気付きましたか?」
「今日は何人だ?」
「三十八人です」
「俺は一体何往復するんだろう……。ティアは墓守と一緒に穴掘りだ」
「任されました!」
今回はかなり数が多い。今後、何か起きそうな予感がする。それも人生を左右するくらい厄介な奴が着実に迫って来ている気がする。
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