第69話 招かれざる客
嫌な勘ほど当たるものだ。レプス家の紋章を付けた馬車が家の前に横づけされるた。馬車か下りて来たのは現レプス家当主のダーマス・レプス。ティアの伯父当たる人物だ。銀髪を短く刈った二十代後半の優男そんな感じの奴だ。コレが姪っ子にその欲望をぶつけ様とした奴かと思うと吐き気がしてくる。
「久しぶりだね、ティア。また一段と綺麗になってる」
「お世辞は別に結構です、伯父様。今すぐ帰ってくれるなら塩をプレゼントしますよ?」
「口が悪くなったね、同居人のせいかな?」
「ご主人様は関係ありません!」
ダーマスはご主人様という言葉にピクリと反応する。ウルルスを親の仇の様な目で見てくる。
「奴隷に落ちたって聞いていたけど、本当の様だね……」
「帰ってくれないか? 今頃しゃしゃり出て何様のつもりだ?」
「ティアを解放しようと思ってね、教会に赦免状を書いてもらったんだ」
「へぇ、それで幾ら教会に金を積んだんだ?」
「無粋だね、僕の徳の高さ故だよ」
絶対金で動かしただろうに、いけ好かない奴だ。
「これでティアは奴隷から解放された。こんな家に住まなくてもレプス家の懐かしい館が待ってるよ」
「ごめんこうむります、今の生活が性に合っているので」
「なぜだい、レプス家の血が絶えても良いというのか!」
「貴方が嫁でも貰えばいいじゃないですか? どうせ、もう居るんでしょ?」
「だからと言って、こんなどこの馬の骨とも知らない奴に所に居なくてもいいだろ!」
「知らないんで来たんですか? おめでたい人ですね」
「ウルルス・コルを名乗る、不埒者の所だろ! コル家に確認したが、ウルルスと云う人物はコル家と何の関係も無いそうじゃないか!」
「いやまあ、俺は生まれてさえ居ないモノと扱われてるから、そお言うだろうよ」
「は? じゃ何か? お前も魔法士だと?」
「回復術士だけどな、攻撃魔法は一切使えない」
その言葉にダーマスは指を指して怒り出す。
「攻撃魔法が使えない半端モノが、何故ティアの近くにいるのだ、汚らわしい」
「おいおい、世界中の回復術士を敵に回すような事言ってんじゃねよ」
「お前の稼ぎなどたかが知れている。家に戻った方が裕福に暮らせるぞ、ティア」
「馬鹿ですか伯父様は私が幾らで買われたかご存知ないんですか?」
「金貨二十枚くらいだろ? いくら見目麗しいからといってそんなに高い訳ないじゃ無いか」
「白金貨八枚ですよ」
「は? 何の冗談だそれは?」
「私には強制のギアスが掛けられているので、ご主人様の命令一つで貴方を殺していまうかもしれませんよ?」
「こんな糞野郎はどっちが殺すかジャンケンで決めたいとこだけどな」
「いいですね、最初はグー……」
「待て待て待て!」
「何だ? ジャンケンがお気に召さないのか?」
「何故、親類を殺すのをためらわない!」
「慣れてますし、貴方みたいなゴロツキは……」
ティアにゴロツキ扱いされて口パクパクさせている。言葉が出ないんだろう。
「死にたくないなら、サッサと帰れ。ダーマスさんとやら」
「塩は高いんですよ? 伯父様?」
顔を真っ赤にさせて帰ろうとするダーマス。
「とびっきりの刺客を送ってやる!」
「これ以上、笑いわさないでくれよ」
「伯父様、最高のジョークです、それ!」
暗殺者に刺客を送るってどんな冗談だろう。私兵の刺客の暗殺者はギルドに所属している者とは雲泥の差がある。それとも、俺を殺すように暗殺者ギルドを頼るのだろうか? ハッキリいってそれは、もう無理である。ギルド長のカリアがそれを許さないからだ。そうなると汚れ仕事専門の私兵を使わなければならない。
ダーマスの手を煩わせない為に俺が自らその心臓を潰しに行ってやろう。これは私情であり、火の粉を払う一石二鳥の理由だった。
「覚悟する事だ、ウルルス・コル!」
ウルルスは手を振ってお見送りする。ティアは台所から塩を持って来てぶちまけている。これは面白い事になりそうだ、とウルルスは心の中で思っていた。
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