第36話 繋がり
「ただいま~」
「お帰りなさい、師匠」
「お帰りなさい、ご主人様」
二人の出迎えが素直に嬉しい。そう思うのは弱っているからだろうか?
「疲れたよ、今日は」
「ギルドに行っただけで、ですか?」
「珍しくお酒も買って来てませんね?」
もうその認識なのかと、苦笑が漏れる。二人の問いに答えずに酒蔵に直行する。今日は度数が高いモノにしよう。今日はもう襲って来ないだろうし。多分。
「今日は疲れた。ティア、グラスに氷を頼む」
「珍しいですね、ロックで飲むなんて」
「まあ、血の繋がりがある実家に狙われるとなると、少し思う所があるんだよ……」
「? どういう事です?」
今日の経緯を掻い摘んで説明する。ギルド長の下りは言わなかった。俺も命が惜しい。
「なんですか、それ⁉」
「信じがたいですね……」
まあ、二人は元々お嬢様育ちだからにわかには信じがたいかもしれない。
「家のメンツもあるんだろうが、ここまで露骨なのはちょっと無かったからな」
「ちょっと、文句を言ってきます!」
怒りに任せて家を出て行こうとするティアを腕を掴んで引き留める。
「やめろ、あんまり気にしてないから。実家の場所も知らんだろ……」
「それは、そうですが。なんか無性に腹が立ちます!」
「私は知っているのでちょっと行ってきます……」
「なんでローガンまで加わる。たぶん返り討ちに合うぞ。それなりに人数いるから、丸焼きにされるのがオチだぞ」
思ったよりも二人とも怒りの度合いが激しい。これほど慕われてる理由が分からんのだが、
「ホントに特に気にしてないからな、なんかちょっとモヤモヤするだけで……」
「「万死に値します!」」
「俺、これでも賞金首なんだがなぁ……」
「あ、忘れてました……。という訳でローガンさん行きましょう」
「そうですね、善は急げとも言いますし」
「なんでそんなに殺る気マンマンなんだよ!」
「愛する人が殺されかけて冷静でいられますか!」
「とりあえず、そいつらの首を撥ねてから考えます!」
「言うんじゃなかったよ!」
別の意味で頭痛の種が増えた。
「ホント、気にしてないから、とりあえず落ち着けよ……」
不承不承、大人しくなる二人。
「悔しいです、ご主人様は悪くないのに……」
「いや、人殺しだからね、俺」
「それはそれ、これはこれです!」
「師匠、実家に狙われる理由は?」
「いやぁ、あり過ぎて分からん」
本当に分からない。ジェフリーは魔法士繋がりだとは思うのだが。
「それよりも二人が怒ってくれてるほうが、俺はうれしいしな」
「なんですか、新手の精神攻撃ですか……」
モジモジするティアは超可愛かった。ローガンは唇を噛みしめて我慢している。やっぱり二人には給仕服を着てもらいたい。ローガンは執事服か?
「血の繋がりってそんなに大事か? 俺は今のままで十分だぞ?」
「まあ、ご主人様がそれでいいなら……」
「まあ、結婚も所詮赤の他人から始まりますしね」
「なんですローガンさん、良い人でも出来ましたか?」
「尊敬する人は居ますよ?」
こちらをチラチラ見るな、二度目の修羅場はごめんだ。
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