第7話
一年生である凛ちゃんは、授業自体は始まっているものの、まだ身体測定や生徒証の作成する際に必要な写真撮影など様々なHR扱いの時間が多いとのこと。
俺のように、本格的に一日中全て授業になるのは来週以降との事なので、来週から放課後に集まって勉強することにした。
場所は、その時の気分や経済状況に合わせて考えるということに。
「どれくらい時間やります?」
「そうだな、ちょっと妹と相談するわ。親が帰り遅いから、帰ってから飯の支度とか家事分担してやってるからな」
「……すいません。そこまで考えていませんでした」
「いや、別に大丈夫。部活してないから、せめて空いた時間に家事ぐらいやれって言うことでやってるってだけだから」
多少夕食の時間が遅くなるだけだし、このことを妹に言えばそんな悪い顔はしない。
「……さっきまで色々言ってましたけど、前向きに考えてくれるんですね」
「何で今更、ちょっとまごまごしてるのさ」
顔を少し赤くして、戸惑ったような様子になっている。
さっきまであんなに大胆で強気だったのに一転、急な変わりようである。
「いや、何かごめんなさい……」
「慣れないことするから……。らしくないよ」
どうやらさっきの行動が、想像以上の恥ずかしさで後からどんどん後ろめたさが増しているらしい。
俗に言う小悪魔的なやつを狙おうとしたのだろうが、凛ちゃんの性格からして妹の影響をそれなりに受けていても、あんまり合っていない。
ただ、威力は凄かったが。
自分も恥ずかしくなるけど、その分更に相手にはあまりにも凄い破壊力。
まさに諸刃の剣。そのことに彼女が気がついて、面白がって乱用しないことを願うばかり。
乱用しだしたら、お互いの心臓……いや段々と一方的に俺の心臓攻められて、間違いなく保たない。
そうなると、もはや諸刃の剣では無くなるが。
※
※
※
※
「じゃあ、私はこっちなので」
「ほい。またね」
分かれ道で凛ちゃんと別れて、自宅に早めのスピードで戻る。
家に着くとすでにドアは解錠されており、妹が先に帰宅しているようだ。
「ただいまー」
「おっかー。ちょっと今日遅かったね。寄り道?」
「んや、凛ちゃんと一緒に帰ってきた」
「へ?」
予想外だったのか、妹から素っ頓狂な声が聞こえてきた。
「一緒に帰ってきたの?」
「お、おお……。そうだけど」
やってしまった。流れで当たり前であるかのように話してしまった。
昨日の時点で、接点をやっと持ってくれたと思って喜んでいた妹からすれば、進展の早さにびっくりするに決まってる。
「めっちゃ仲良くなってるじゃん! どっちから誘ったの?」
「凛ちゃんからだね。色々高校の話もしながらどうかって、言われてさ!」
実際に部活の話を主にしながら帰ったので、嘘はついていない。
後のことは、凛ちゃんに丸投げして妹から質問攻めにあってもらおう。
「ほうほう、なるほどね! で、凛は部活動するって?」
「また色々詳しくは凛ちゃんからも聞いてくれたらいいけど、あんまりやりたいものがないらしいよ」
「んー、じゃあ凛も兄さんと同じように無所属ってことになるの?」
「そこなんだけどさ……。高校の勉強も大変だから、凛ちゃんが放課後に勉強を見てほしいって言っててさ。1時間か2時間くらい付き合って見ようかと思うんだけどいいか?」
「ほうほう。……ってか、本当に短時間で随分と仲良くなったんだね」
「ま、まぁ……」
流石の妹でも、一気に展開されすぎて不審に思ってしまったか――。
「いいんじゃない? 無所属怠惰を極めるより、友人にプラス効果を与えてくれるなら、その方が良いに決まってるしねー」
予想通り、前向きな答えが返ってきた。
「理解のある妹で助かる」
「まぁでも面倒くさがりな兄さんがそこまでするなんて、何かあったの?」
しかし、普段の俺を知っている妹からすれば、そこまでやる気を出していることが気にはなるらしい。
「いやだって、お前が散々世話になってる友達だぞ? 俺からしたら、遊び来るよう呼んどいてまたせてる時点で何回も申し訳なく感じてるんだよ!」
「いやー、その件はね。どんなに予定があっても、頼りにされると助けないといけないし。それに凛はその辺りも理解してくれてるから!」
「お前がそう思ってても、外から見てりゃあ申し訳なくなるっつーの。だから俺に出来る事なら、やろうってやる気出してるわけ!」
へーへーと気だるそうな返事が返ってきた。
どうやら、俺への対応の面倒さに加えて大体納得はしたようだ。
「まぁこれも話のネタに、色々話してくれ」
「女子トークに余計な気遣いと要求を入れるな、キモいから。それに言われなくても聞くし」
妹の機嫌がちょっと悪くなってきたので、それ以上話を続けることをやめた。
いつもなら居心地が若干悪くなるけど、今はとても助かる。
後のことは凛ちゃんが、何とかすると勝手に思っておこう。
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