第161話 神殿構想
俺たちはハイデンに向かう間、酒盛りを例のごとく続けていた。ジョッキやグラスが空くとすぐに黒ちゃんが酒のなみなみと注がれた新しいジョッキやグラスと替えてくれるので、飲むペースが異様に速い。
酒をハイピッチで飲みながら、いい気になってバカ話をしていたら、その中で現在トルシェ2号が魔術師ギルドで増量中の陸戦隊員を使って大神殿の警備隊を作ろうということになった。
不思議なもので、タダの警備隊も頭に神殿と付けるだけで何だかカッコいい響きになる。
「神殿警備隊」
「神殿警備隊員」
「カッコいいー!」
「何か他にも頭に何か付けてカッコよくなるものはありませんかね?」
「そーだなー。今まであるものに取ってつけても混乱するから、何か新しいものを作るときにそういった手法で名前を付ければいいかもな。
おっと、黒ちゃんありがとう。次のお替わりはそっちの赤ワインにしてくれ」
「なるほど。たしかにやたらとそんなことをしていると、名まえを付けた本人が忘れてしまいそうですものね」
「トルシェもアズランも若いからそんなことはないと思うが、俺くらいの齢になってくると確実に忘れるな」
「ダークンさん、わたしたちとダークンさんの歳はそんなに離れてはいないでしょう?」
「まあ、いいや。何かないかな?」
「そうですねー。新しいものとなると、大神殿がらみですものね。そうなってくると頭につける言葉は『大神殿』『神殿』くらいしかありませんよね」
「だよな。あと神殿で必要な人員は何だと思う?」
「神官長?」
「ああ、そういったのも必要だよな。そろそろ大神殿の組織を考えていった方がいいよな」
「ハイデンまでまだたっぷり時間があるから、飲みながら考えていきましょう」
「
黒ちゃん、私にはその蒸留酒を。はい、ありがとう」
酔っぱらった頭で組織を考えて、果たしてまともな組織を思いつけるかどうかわからないが、最低でもたたき台くらいはできるはずだ。問題はでき上ったたたき台を忘れてしまうことだな。
「まずは神官長は分かった。その下は何になる?」
「大神殿というのはいわば総本山。地方にもこれから神殿を作っていくんでしょ?」
「もちろんそのつもりだ」
「それなら、地方を束ねる組織も必要ですよね」
「そうだな」
「ということは、大神殿の神官長は大神殿長、地方は神殿長でいいんじゃ?」
「それの方がいいな」
「神官長がお金の心配するのも変な話だから、事務長がいるんじゃ?」
「確かに。一応、絵にしてみるか。何か書く物は無いかな? やっぱりちゃんとした紙があった方がいいな。
トルシェ、白い板と、炭が創れないか?」
「はーい」
トルシェが創ってくれた白い粘土板?に炭で組織図なるものを書いてみた。
大神殿長
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大神殿警備隊長──┼─―大神殿事務長
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├―――――┐
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大神殿神官 地方神官長
「こうやって見ると、暫定ではあるが、俺が大神殿長、トルシェが大神殿事務長、アズランが大神殿警備隊長ってところだな。上の三人はいいとして、肝心の大神殿神官の当てがないな」
「面倒だから、スケルトンを召喚しちゃいます?」
「一応神官なんだから、信者に向かって説教くらいできないとマズいぞ。説教がカタカタ言葉じゃ無理だろ」
「とすると、神官を養成することになりますか?」
「そうなるな。ただ、神官と言っても仕事は信者からお布施を貰って何か一言ためになることを話してやったりするだけだろ? 面倒だったら信者に向かって『あなたに闇のご加護が有らんことを』って一言言っておけば上等だろうからな。
下っ端だったら神殿内のいわゆる
王都で人を集めると
「それもそうですね」
「ところで、大神殿の名前はどうします?」
「それはもう決まっている。『常闇の大神殿』だ」
「いいですね。となると内装は黒を基調としたものになるんですね」
「基本俺たちは神殿の奥の方に引っ込んでいるわけだから、あまり内装にこだわる必要はないが、眩しいのはダメだな。普通は小さな神殿から初めて段々神殿を大きくしていくんだろうが、今回はいきなり大神殿を作るわけだから、神殿ができた後も落ち着くまでは時間がかかるだろう。気長にやろうぜ」
「それもそうですね」
「あと、神殿警備隊だがな、せっかく陸戦隊員を使うのなら、敵対神殿に対してカチコミくらいかけて、関係者から恐れられるくらいにはしたいよな」
「ダークンさん。どこかに敵対神殿ってありましたっけ?」
「さあ、そもそも神殿すら見たことはない。アズラン、王都の中に他の神殿を見たことはあるか?」
「いえ、見たことはありません。そもそも神さまを信じている人はほとんどいないんじゃないでしょうか。そういった意味では大神殿は信者獲得のために逆にねらい目かもしれません」
「そうだった。大神殿の目的はあくまで信者獲得だったが、つい大神殿建設が目的になっていた。大神殿ができるまでは相当な時間がかかるはずだから、地道に信者を増やしていこう」
「はーい」「はい」
「黒ちゃんお替わり!」
こうやって大神殿の構想を飲みながら話しているあいだにもタートル号は西に向かって進んでいる。
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