第119話 ヤルサ戦2。神の怒り、拡散波動モード!
敵のどでかい投石器から撃ちだされた大きな丸石が青空を背景にヤルサの城壁に向け放物線を描いて飛んでいく。石が空中にある時は音はほとんどしないが、落ちてからやっと大きな音がする。
見ていると、投石器一台当たり五分に一発、投石器は五台あるので、一分に一発の割合で丸石が撃ちだされている勘定になる。ずいぶん悠長な感じもするが、全部の作業が人手なためそれでも結構な速度なのだろう。
この戦場にいる連中から見て俺たちのタートル号は、突如、戦場近くに現れた怪物に見えたと思う。この怪物に対して、守備側は余裕がないのか何も動きはないようだが、部隊ごとにきれいに整列していた攻撃側から、槍を持った兵隊が二十人ほどこっちに向かって駆けてきた。
そいつらを眺めていくわけにもいかないので、
「敵の兵隊がやってくるが、
「それじゃあ、景気よくスッポーンでいきましょう」
「そうだな。そしたら、タートル号で投石器を壊しながら敵陣に突っ込んで、目ぼしいものを壊していってくれ。俺はタートル号の上に上がってアピールする」
「
最初は、簡単に範囲攻撃で根絶やしにしてやろうと思ったが、ここのところの酒盛りで体が少しなまってきたようなので、趣向を変えて殴り込みをすることにした。
音は聞こえなかったが、見事なスッポーンでタートル号に向かってきた敵の兵隊が全滅した。でき上った頭の上半分のなくなった死体をタートル号が何個か踏み潰して敵に向かって突っ込んでいく。
巨大な怪物に向かった兵隊たちが何もできずに全滅した上、その怪物が自分たちの方に突っ込んでくるのに慌てた敵軍は大きく隊列を乱してしまった。
俺の方はハッチバックを開けてタートル号の甲羅の上によじ登って仁王立ちになる。時速三十キロ程度のスピードでも結構風が頬に当たって気持ちがいい。長めの黒髪が風になびくのだが、もう少し短い方が良かったか?
何も言わなかったが、アズランもフェアを肩に乗せて俺の後ろに立っていた。
みるみる投石器の
そのうち、弓を射かけられるようになったが、タートル号にはもとよりそんなものは効かないし、俺も顔の近くに飛んでくる矢だけを手で払えば済むだけだ。もとよりアズランにはかすりもしない。
最初の投石器にタートル号がぶちかましをかけたところで、俺とアズランはタートル号から跳び下りた。
俺は手にしたエクスキューショナーとリフレクターで、アズランは断罪の意思で手当たり次第、敵を殺しまくっていった。フェアはインジェクターを振り回して敵兵の頸動脈を切り裂いているようだ。
俺とアズランが暴れ回っている間に、タートル号はぶちかましで投石器五台全部壊した後、敵兵を踏みつぶしながら陣地の先に並んで建っていたテントを潰し始めたようだ。あっちはあっちで、なかなか楽しそうだ。
俺は華麗に敵の首を切り飛ばし、叩き潰しながら戦場を舞い踊る。
なかなかいい運動になる。俺自身かなり接近戦に熟達したようで、血や脳漿でナイトストーカーを汚すこともほとんど無く、しばらくそんな感じで楽しんでいた。
最初はたかだか一万五千ほどの敵だとタカをくくって敵陣に突っ込んだものの、俺とアズランの二人で処分するにはそれなりの数だ。そのうち飽きてきてしまった。
「おーい、アズラーン!」
少し離れたところで、敵兵の急所に断罪の意思を突き入れていたアズランを呼んだ。
すぐに俺の
「どうもこれだとラチが開かないし面倒になったから、やっぱり範囲攻撃で仕留めてしまおう。アズランは危ないからタートル号の中に入っていてくれるか」
「はい」
アズランがフェアを肩に乗せて、テントを壊しまわっているタートル号の方に駆けて行った。もちろん、アズランの駆け抜けた後には、敵兵の死体がゴロゴロ転がっている。
俺が今現在敵陣の真っただ中にいる以上、『神の怒り』は発動しにくい。おそらく俺が俺の『神の怒り』を受けたとしても耐えることはできそうだが、あえて危険なことはする必要はない。
敵兵たちは、今のところ俺を遠巻きに囲んでいるだけで何もしかけてこない。俺に近づけば確実に死ぬわけだから、それはそうだ。逃げ出していないだけでも大したものだとは思うが、それが
アズランがタートル号の中に入るのを見届けた俺は、神として新たな覚醒を遂げた
「闇を
ほんとは、個別ターゲットモードなんだが、拡散波動モードとその場のノリで名付けてしまった。
いままで雲一つない青空だったものが、夜が訪れたように急に暗くなった。太陽も含めて空が黒く塗りつぶされていく。星ももちろん瞬いているわけではないので夜になったわけではない。要するにわが『闇』の権能によって、この地を闇で覆ったわけだ。
今までの『神の怒り』の演出は渦巻く黒雲だったが、これから昼間の『神の怒り』はこの演出に決めた。夜間はこの演出だと地味なので、今まで通りでいいだろう。
空は闇で黒く塗りつぶされているが、闇は暗黒ではないので、一般人でもなんとか物を見分けることはできる。
敵兵たちが、キョロキョロと空を見上げている。最期の光景を目に焼き付けてくれ。
ビシッ!
稲妻が走り、
ズドドドドーン! 落雷が敵兵を十人ほどまとめて吹き飛ばした。
ビシッ! ビシッ! ビシッ!
ズドン! ズドン! ズドドドドーン!
空から地面に稲妻がいたるところで走り、敵兵がまとめて吹き飛んでいく。
さすがにこれには、敵兵も耐えきれなかったようで、大声で泣きわめきながら逃げまどい始めた。もう遅いのだよ。どこにあるのか分からないがお前たちは『神のシステム』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます