第100話 宝探し

[まえがき]

なんのかんので、とうとう100話まで来てしまいました。

◇◇◇◇◇◇◇◇



 トルシェの特大、超高温ファイヤーボールの一撃で巨人が沈んでしまった。


 あまりのあっけなさに、俺とアズランに合流したトルシェ自身も驚いていた。


 結局巨人が何だったか分からずじまいでたおしてしまったわけなのだが、この謎空間に何も変化が起こらない。従って、今のところ広大で真っ暗な空間に雪隠詰せっちんづめ状態だ。


「ダークンさん、強敵かと思って、思いっきり魔力を込めたファイヤーボールを撃ったんだけど、一発で吹き飛ぶとは思いませんでした。ちょっと拍子抜けでしたね」


「いやいや、トルシェの思いっきりのファイヤーボールがすご過ぎただけだと思うぞ」


「エヘ。そうですか。エヘヘヘ」


 いくら俺の眷属とは言え、おだてておいて損はないからな。


「あいつを斃せば、この謎空間から脱出できると踏んでたが、何も起きないな」


「もしかしたら、以前倒した炎の巨人やゴーレムみたいに残骸の中にたまか何か残っているかもしれませんよ」


「アズランは今の話は知らないか。

 実は、テルミナの拠点にしているワンルームを見つけた時。その前に俺とトルシェで炎の巨人と金属製のゴーレムをやっつけたんだ。そしたら、そいつらを斃した後の残骸の中に珠が一つずつ入っていて、その二つの珠がワンルームへの扉のキーだったわけだ。

 しっかし、そこの残骸の量を見てみろ。三人で調べるにしてもちょっとやそっとじゃないぞ。何かあるのが分かっていて探すのならそれでも何とかなると思うが、あるかないかわからないものをこの山の中から探すとなるとな」


 連なった残骸の端の部分には足首からの先の両足部分だけ形がちゃんと残っていたが、足首から先は倒れた衝撃で粉々というほどではないが、かなり砕けて小山になっている。


「……」


 トルシェは作業量を想像したのか言葉が出ないようだ。


「見ていても仕方ありませんから、少しずつでも探していきましょう!」


 こっちの優等生は健在だった。


 眷属にそこまで言われてしまっては、俺も宝探しを始めないわけにはいかないので、


「よし、やるか。

 トルシェ、宝探しを始めるぞ!」


「はーい」


 トルシェも素直ではあるんだよな。


 暗がりの中を見渡すと、巨人の残骸はいちおうは小山になっているものの、体の形で縦に延びているし、ファイヤーボールの爆発で頭の残骸はかなり遠くまで飛び散っている。


 確かにトルシェが一瞬言葉に詰まったのもうなずける。


 とやかく言っていても始まらないので、大事なものがあった可能性の高い胸のあった部分辺りから三人で探すことにした。


 巨人の残骸は、生ものではなく乾き物かわきものなのだが、色は赤黒くどこか禍々まがまがしい。持ち上げるとやはり石の重さはある。端の方から取りついて少しずつ崩しながら、崩れた瓦礫を後ろに放り投げていく。


 こういった先の見えない作業をすると、みんな無口になるようだ。それでも、何も考えずせっせ、せっせと作業を進めていった。


「ダークンさん。何だか残骸の量が減ってきてないですか?」


 アズランにそう言われて改めて残骸の山を見回すと、確かに俺たちの作業とは全く関係なく量が少なくなってきている。


「地面に取り込まれてるのか? やっぱりここはダンジョンの中だ」


「それなら、どこかに階段があるはずですよね」


「巨人がボスだったのなら、あれで、階段が現れても良かったよな。逆に考えると巨人はボスじゃなかった? 待て待て、先に進む階段は現れていないかもしれないが、ここに入ってくるための階段は少なくともどっかになければな」


「入ってきた階段は、塔の中の階段だったんじゃ?」


「何だか頭がこんがらがって来たな。待っていれば、瓦礫も減るから、ちょっと休憩しよう」


「はーい」「はい」


「あれ? 忘れてたけど、鳥かごはどこに置いたっけ?」


「取ってきます」


 アズランが駆けだして、すぐに鳥かごを持って帰ってきてくれた。


 すっかり悪魔サティアスのことを忘れていた。


 鳥かごの中のサティアスを見ると、体育座りしていた。どうやらすねてるらしい。すねても顔がデカくていかついのでまったくかわいくない。


 鳥かごを脇に置いて俺たちも三人で連なり体育座りして、いつものように木の実を食べ始めた。


 パリポリ。


「こうやってじっと見てると瓦礫が地面に飲み込まれているようには見えないが、しばらく目を離してもう一度見ると違いが分かるな」


 ポリパリ。


「全体にすれば結構なスピードで飲み込まれてるから、あと一時間もあれば飲み込まれそうですね」


 パリッ。ガリッ。


「そうだな。だけど、全部なくなってしまうと、それはそれでマズくないか?」


「その時はその時でしょう」


「それもそうだ」


 横に置いた鳥かごの中で可愛かわいらしく体育座りをしている全く可愛くないサティアスが、


「あのう、われはいったいこれからどうなるのでしょう?」


「さあ、あと、十年くらいはそのかごの中にいるんじゃないか? せいぜい俺たちに置き忘れられないようにしろよ」




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