第53話 グレーターデーモン
黒い影が集まってグレーターデーモンが姿を現した。
トルシェに俺の勘だけの注意を伝えた後、トルシェの後ろで体育座りをして、ピスタチオもどきを食べながら高尚な洞察を進めていく。アズランはとなりでレーズンを肩にとまったフェアと一緒に食べている。
グレーターデーモンとじじいが言っていたが、本当にグレーターデーモンなのか何なのか、もう少し俺に近づいてくれないと鑑定は出来ないようなので、実際のところは分からない。
デーモンなんだから背中にコウモリの翼くらい生やしているのかと思ったら、何も背中には生えていなかった。
翼が生えていても、筋肉が連動していなければそもそも飛べないわけだし、腕が生えている以上翼が体を持ち上げるほど羽ばたける筋肉を胸にまとうことは不可能と思えば当然な気もする。
そういった理由からかどうかは分からないが、とにかく翼はない。それにも関わらず、足は地面から浮いている。反重力能力があるようだ。
この反重力能力を強めてやって、重力を完全になくしてやったら、自転による遠心力で宇宙に放り出されるかもしれないと考えてしまった。ここがどこかの惑星で、ちゃんと地動説の通用する世界だということが前提だがな。
なんであれ、この世界の設定ではデーモンは翼を持たないのだろう。異文化を
デーモンの翼はどうでもいいが、果たしてその能力やいかに。
顔の輪郭や手足の輪郭がぼやけているのは、なかなかダークっぽい風情があって合格点だ。しかも少し開いた口の中は真っ赤に見える。これもプラス加点だ。おっと、輪郭ははっきりしないのだが指先の爪も鋭いように見える。
ただ、出てきたデーモンは全裸のくせに股間にあるべきものがぼやけているせいというわけではないのだがはっきりと確認できない。こいつはメスなのか? そもそもそういった器官を持っているのか? ああ、それが問題だ。
デーモンの股間を注視しつつ、トルシェの出方を待つ。よーく考えたらこれは変態行為なのかもしれない。よーく考えなくてもいいか。
おっと、デーモンがトルシェの方に近づいてきた。宙に浮いている関係で、何だか滑るように移動する。
トルシェはさっきのじじいと同じように、両腕を上げて、
「出でよ、
トルシェが召喚魔法を使えるとは聞いたことはないが、さっきのじじいの召喚術を見ただけでヒール・オールを見た時のように自分でも使えるようになったのだろう。げに、天才とは恐ろしいものだ。
トルシェの召喚は一発で成功したようで、真っ黒な人型をした鳥、いや、艶のある黒さは濡れ羽色とでもいうのか、濡れ羽色をした烏人間が立っていた。大きさは目の前のグレーターデーモンと同じくらい。翼を畳んで体に巻いているため腕は見えない。ペスト医師が真っ黒いマスクを着けているようなの顔の感じだ。二本の足にはそれぞれ三本の指が生えていて、その指には鋭い
黒き鳥神か。わが眷属が召喚するにふさわしい召喚獣だ。
その、
グレーターデーモンは魔法を使うのかと思っていたが、肉弾派だったようだ。しかもいまのところ仲間を呼んでくれない。
鳥神は真っ黒い翼を広げ足の方からグレーターデーモンに飛びかかった。鳥神には腕はないらしい。
鳥神は鈎爪で近づいてきたグレーターデーモンの胸から顔にかけてめちゃくちゃに切り裂きながら駆けあがり、そこから二十メートルほど飛び上がった。そこでくるっと反転した鳥神はそのまま逆落としで嘴を先にして頭からグレーターデーモンに突っ込んでいった。こっちも結構な肉弾派だった。
グレーターデーモンは鳥神の攻撃で傷だらけになっているはずだが、ほとんどダメージは受けていないようだ。
逆落としに落下してきた鳥神に対し、グレーターデーモンが右手のこぶしで殴りつけようと振り上げたところに鳥神の嘴が衝突した。
そのまま、グレーターデーモンの右手のこぶしが砕かれ、肘あたりまでがバラバラになってしまった。
そこで、鳥神は頭を上にくるりと回転して体勢を整え、バックステップで間合いを取った。
後ろに立つじじいが自分の召喚したグレーターデーモンに対し何か言っているようだが、何を言っているのか俺には理解できない言葉をしゃべっているようだ。俺が理解できないということは、タダの言葉ではなく何かの呪文なのかもしれないし、デーモン語かもしれない。
一度鳥神の
トルシェの方は自分の召喚した鳥神に対して、普通に「ヘイスト」「パワー」などのバフを掛けていた。トルシェにしては正統派な戦い方だ。普段なら、じじいの頭をスッポーンしているか、炭に替えているのだろうが、今回は魔法勝負にこだわりがあるらしい。
鳥神がグレーターデーモンに向き直り翼を広げ軽く羽ばたいたいてみせた。
そのとたん、無数の真っ黒い羽がグレーターデーモンに向けて撃ちだされ、グレーターデーモンの体に一度突き刺さったあと小爆発を起こしていった。無数の小爆発がグレーターデーモンの体を覆ってしまい、グレーターデーモンが見えなくなってしまった。ダメージはそこまでないかもしれないが、これだとグレーターデーモンは何もできないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます