第43話 でっちあげ
結局、マイルズ商会の番頭格の男、ハットンを信者に加え、マイルズ商会を任せることにした。
店の方は、トルシェが根こそぎにしてしまっていたので、その後もう一度ハットンを連れて店に戻り、倉庫の中の物や、店の中で使うものを返していった。
不思議なことに、トルシェは何がどこにあったのか全て覚えていたようだ。道についてはアズランが全てを覚えているし、
荷物を返し終えた俺たちは、あとをハットンに任せて、リスト商会に向かった。
勝手に建物の中に入って、リストのおっさんたちを呼びだし、新たに信者となったハットンがマイルズ商会の会長になったことを教え、今後マイルズ商会と協力して商売を進めていくように指示しておいた。
「さすがはわが主でございます」
リストのおっさんと娘マレーネ、それにシーラがしきりに感心していた。
話していると、休んでいる連中も少しづつ戻ってくるといっていたので、それくらいなら、全員神の奇跡で治してやるから、明日の朝、無理してでも店に集めておけと言っておいた。
店を
だいぶ時間をとってしまったので遅い昼をそこらの食堂に入って食べながら、
「さて、当面の拠点と考えていたマイルズ商会を返してしまったが、どこかに拠点を構えるか?」
「ダークンさん、その前に、われわれを討伐してしまいませんか?」
「それもそうだな。マイルズ商会への押し入り強盗団を早めにでっちあげてすっきりしよう。それで、具体的にはどうする?」
「ちょっと危なそうな小道を三人で練り歩いて、バカを釣るのはどうでしょう?」
「そりゃあいいな。最近俺たちにちょっかいを出してくるヤツがいなかったものな」
「金カードはちゃんと隠して。
それじゃあアズラン、それらしい道に案内してくれる?」
「だったら、あの辺りかな?」
食堂を出た俺たちは、アズランの案内で大通りからわき道にそれて、さらに何度か曲がり角を曲がって、いかにもな通りに出た。このあたりの道は舗装されていないようだし独特の臭いが漂っている。道の両側には人が住んでいるのかいないのか分からないようなボロボロの民家が並んでいた。
道端には、みすぼらしい衣服を着た男たちがうつろな目をしてしゃがんでいるし、建物の戸口で昼間から酒を飲んでたむろしている連中もいる。
俺たちが前を通っても、じっと見ているだけで、なかなか相手をしてくれない。どうも王都の連中は積極性が足りていないようだ。今回は文字通り、俺の
「なかなか、ワルが出てこないな」
「それもそうですが、どういった感じで殺しましょうか? 炭にしても良いですが、この前の屯所で一度使っていますからマズいですよね」
「そうだな。何か中身が分からないような殺し方はないかな?」
「ダークンさん、それならコロちゃんの体液をフェアのインジェクターにつけて
「それはいいな、一気にグチャグチャに溶けて何が何だかわからなくなるものな。よしっ、それで行こう。死体はキューブに入れて運べばいいだろうしな」
「フフフ。グチュグチュを冒険者ギルドに持っていって、受け付けのカウンターの上で取り出したら、ウフフフ」
「トルシェ、あんまりよそさまに迷惑かけない方がいいんじゃないか? 今回も受付嬢はいい人だったじゃないか」
「嫌だなー、想像しただけですよ。そんなことするわけないじゃないですかー」
ほんとかな。そういったところは、今一信用できないんだよな。
なかなか俺たちにちょっかいをかけようという骨のあるやつヤツが現れてくれない。
「意外と王都の連中はおとなしいんだな。旅の途中の宿場町では何回か俺たちにちょっかいをかけてきた連中がいたのにな」
「こうなったら、こっちからケンカを吹っ掛けましょうか? 肩が当たったとか言って」
「それだと、まさにならず者じゃないか?」
とはいえ、一応今回は相手に死んでいただくわけなので、俺たちはならず者どころか獲物を探している殺人鬼なんだがな。
「困りましたね。もう少し歩いて、また別の場所に行ってみましょう。それでだめなら夜の街でしょうか?」
「ここの連中のような覇気のない連中より、夜の街に繰り出しているようなヤツらの方が骨はありそうだよな」
そんなノンキな話をしながら道を歩いていたら、壊れかけのような民家の扉がいきなり開いて、目の前に痩せた女が転がり出て来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます