第38話 王都冒険者ギルド1
宿屋に向かう道すがら、
「トルシェ。マイルズ商会では、あらかたの物を
「一応根こそぎにしてきました。窓もなくなったから、夜になったり雨が降ったら寒くなるかも」
「ご苦労。それで裏の倉庫の中には目ぼしいものはあったのか?」
「倉庫は穀物中心でしたが、一つ立派な蔵のような倉庫があってその中に貴金属やらいろいろありました。あと、その中に『パルマの白い粉』の入った木箱が数箱ありました」
「あの粉も拾ってきたのか?」
「あそこで焼くわけにもいかなかったので、いちおう持ってます」
「まあ、それは仕方ないか。早いうちに処分しとけよ。いや待て、それを作って広げた連中に使って、自分たちのやって来たことを身をもって味わわせるのも
「それは面白そうですね。わかりました」
マイルズ商会の隣にある宿屋をトルシェがとったので、宿に向かえば必然的に少し前まで立派だったマイルズ商会の建物が目に入る。
窓という窓がなくなって、廃屋のようになってしまっている。
「そういえば、あの
「目が見えないからと言って治療院にいったようですがもう帰ってきているかもしれません」
「あのじじい、ここに住んでいるのか?」
「会長のいた部屋の奥は私室になっていましたからここに住んでいるんじゃないでしょうか」
「俺の持ち物に勝手に居座られては困るから、追い出すとするか。窓がないからちょうど道にポイ捨てするのに便利になったな。ワッハッハ」
「先に、警邏の屯所を潰しておいたので、これからは白昼堂々ですね」
「そういえばそうだな。やり放題だ。ワッハッハ」
おっと、もしかしてこれはトルシェ型思考ではないか? 最近犯罪者的思考が根付いてきたのかもしれない。ダークサイドに落ちてしまわないよう注意が必要だ。
うん? 待てよ、よく考えたら『常闇の女神』さまの俺がダークサイドもへったくれもないだろ。そんなのに落っこちても何にもならないんじゃないか?
宿屋に行く前に、もう一度マイルズ商会の建物に入っていき、中に人が残っていないか確認することにした。中はトルシェが根こそぎにしたというだけあって空っぽのがらんどうだ。家具や調度はもちろんのこと、窓もなければ明かりも何もない。
一番上の階の4階まで見て回ったが、さすがに誰も残っていなかった。
「建物自体は今回は壊していないから、壊さずこのまま使ってもよさそうだな」
「そうですね。権利関係の手続きをリスト商会で終わらせてくれたらここを拠点にしましょうか」
「トルシェ、その前に雨でも降って建物が傷んだらマズいから、窓だけは付けておいてくれるか。アズランも手伝ってやってくれ」
「はーい」「はい」
俺も手伝って、三人で窓をつけていった。その方が雰囲気出ると思って明かりはわざと元に戻さなかった。
「ここはこんなところだな。あとはここの連中が舞い戻ってこないようにしないとな。トルシェ、出入り口を塞げるか?」
「金物の扉ならよかったけど、木の扉なので、何か板でも打ち付けるくらいしかできないかな」
「明日にでも、材木屋に行って見るか? どっかにあるだろ、材木屋」
「なければ、どっかの家の中から拾ってくれば何とかなりますよ」
「それはそうかもしれないが、無関係なヤツの家に押し入れないだろ?」
「なら、関係者の家から拾ってきましょう。明日ここに店の連中が顔を出すかもしれませんから、どこに住んでいるか聞き出しましょう」
「それは、一石二鳥のいい手だな。それでいこう。
それじゃあ、宿屋に行くか」
「はーい」「はい」
宿屋に入り、トルシェのとった四人部屋にいったん引き上げた。
「さすがは王都と言ったところか。俺たちのワンルームに比べれば当然落ちるがなかなかいい部屋じゃないか」
「その分お高い値段設定だったけど、また明日も頑張ってお仕事するから問題なし」
「まだ少し早いがそろそろ夕食にするか?」
「そうですね。どこにいきます?」
「街中だから色々食べるところもあるだろうが、下の食堂でいいだろう。それなりにおいしいんだろ?」
「私たちならたいていのものが美味しく感じますから大丈夫でしょう」
「だな。ちょっと早いが今日も酒盛りいくぞー!」
「ですね」「はい」
今日も三人で食事をしながら酒盛りだ。陽のあるうちから飲む酒はことのほかおいしく感じるのはどうしてかね?
「ところで、明日は、隣の建物を見張る以外に何をしますか?」
「そうだなー、材木屋にわざわざ行きたくないし、隣を見張るといってもただ見ているだけではつまんないから、そっちは適当にして、何か面白いことはないかここ王都の冒険者ギルドにでも行って見るか?」
「それは面白そう。バカが絡んできてくれるようにAランクのカードはちゃんと隠していきますからね!」
「トルシェは趣味が悪いな。だが俺もそういうのは大好きだぞ」
「でしょう?」
「だな」
「ワッハッハ」「アッハッハ」
「アズランはそうでもないのか?」
「いえ、私も大好きです。エッヘッヘ」
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