第22話 地下へ
ネクロマンサーもどきのゾンビをトルシェが
その建物は最初から扉の付いてない建物で、中は壁の一面が祭壇のようになった、五十人は余裕で入れそうな一種のホールだった。祭壇以外の三面にはレリーフが施されていて、かなり手の込んだホールになっていた。
ここは文字通り葬儀場の
祭壇の向かい側に、金属製の扉があったので、鍵がかかっているかどうかも確認せず、蹴破ってやった。
気分はカチコミ。壊してなんぼだ!
扉のなくなった先にはアズランが言っていたとおり下へ続く石の階段があった。ダンジョンでの300段の階段に慣れている俺からするとちゃちな階段だが、途中踊り場が何段にもなった階段で、一番下まで下りたら60段くらいあった。人の手による地下という点では、それなりに深い場所のようだ。
俺たちが下り立った階段下から、一本の通路が先の方に延びていた。
その通路は石組みで、かなり立派なものだ。ところどころ壁に明かりが
通路の先には、両開きのような金属製の扉が見える。
「荷物を抱えた二人組が前方の扉を開けて入って行ったのを確認して引き返してきました」
と、アズラン。
「さっきのゾンビ・ネクロマンサーが出てきたところを見ると、俺たちがここに来ていることは、向こうに知れているんだろうから、せいぜいドンチャン騒ぎをしてやろうぜ」
アズランを先頭に、俺とトルシェがやや遅れてその通路を進んでいく。
「せっかく王都までやって来てまともなものは今まで何も落ちていなかったけれど、そろそろ、お宝
「ここの通路はすこし手がかかっている。トルシェ、ここなら金目の物が手に入るかもしれないぞ。そこいらの照明も魔道具っぽいから高く売れるんじゃないか?」
「ほう。ダークさんは、見るところが違いますね。落ちてるものしか目になかったので壁の物を拾って歩くのを忘れてました」
トルシェはいったん引き返して、壁に埋め込まれた照明を自分の短剣でほじくり出して、回収を始めたようだ。こいつは放っておいていいだろう。
正面の扉の前にして、
「
木こりが木を切り倒すときの気持ちで、巻き込まれ事故が起こらないように蹴破ることをまわりに知らせて、右足で蹴っ飛ばしてやった。
おう、これこそわが権能のひとつ『慈悲』の現われ!
扉の真ん中を蹴ってやったので、扉は吹っ飛ばなかったが、左右どちらの扉の金属板も上の方の蝶番が外れてしまい、ひん曲がった下の蝶番だけで枠組みにくっ付いているだけでブラブラになってしまった。
扉が開いたところで、
「ダークンさん、非常にわずかですが、『パルマの白い粉』の臭いがします」
俺にはまだわからないが、アズランには白い粉の臭いが嗅ぎとれたようだ。
蹴破った扉の先はここもホール状の部屋になっており、正面と左右に三つ金属製の扉がついていていた。
部屋の照明は壁ではなく天井に埋め込まれていたため、トルシェは短剣を使って何とかほじくり返そうとしていたが、トルシェの背の高さだと天井まで届かなかった。
「ダークンさん、照明を取り外したいんで、すみませんが肩車してもらえませんか?」
トルシェのヤツ、
仕方ないので、俺に背中を向けて両足を開いて立ったトルシェの股の間に頭を突っ込んで肩車をしてやった。
「おー、高い高いー。気持ちいいー」
「いいから早くしろよ」
「はいはい。ダークンさん、もうちょっと前、そう、そこ」
トルシェは俺に
別にその程度はいつものことだし、逆に考えれば装甲の薄いトルシェなどが狙われるよりよほどいい。
「アズラン、『粉』の臭いはどの扉から漂ってきているか分かるか?」
「どの扉からも漂ってきていますが、強いて言えば、右の扉からの臭いが強いようです」
「どっちからでもいいけど、それじゃあ右から見て回るか」
右の扉も俺が蹴っ飛ばしてやったら、両開きの金属製の扉の片割れが吹っ飛んで行った。
飛んで行った先の方では、二人ばかしの覆面男が血を流して倒れているじゃないか。まさか俺のせいなのか?
「
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