プロローグ
時を
乙女はかざした手の先から温かな光を生み出し、病人や
乙女はその力を
その後、乙女は王宮の外へ出る機会を得た。王が
青年は乙女の助けを得て王位継承争いを制し、乙女の手ずから
青年と乙女は民のために
その三十年にも
「たとえこの先、何度生まれ変わったとしても、私はこの王国を見守り続ける」と。
乙女の死後、グランドール王国では、王が
やがて時は過ぎ、グランドール王国の辺境の地に一人の少女が生まれた。彼女は幼い
少女はまだ知らない。この地で十七人目の王が選ばれる日に、彼女の運命が大きく動くことを。
『グランドール
◆◆◆◆◆◆◆
「
王が目前に並ぶ三人の王位継承者たちに向け、口を開く。
第一王女のヴィオレッタは父王の顔を見て、はっきりうなずいた。一方、先王の遺児にして彼女の
王は居並ぶ三人の顔を一人ずつ
「これから一年間、おまえたちには『光の乙女』の生まれ変わりを探してもらう。その上で光の力を
言葉にならない
「試験の内容は以上だ。
王はそう言うと、
「お父様ったら、とんでもないことを考えてくれたわね」
残された広間の中で最初に口を開いたのはヴィオレッタだった。彼女は燃えるように赤い髪を
「光の乙女なんて、
「私も
そう宣言したのは、レナルドだった。
「近年の
レナルドの誠意あふれる発言に、弟のリアムが
「民は生かさず殺さずというのが、
ヴィオレッタにとって、民とは
「ヴィオレッタ、君にだけは王位を
「なんですって!? 滅びるって、あなたの方がよっぽど……うっ!」
ヴィオレッタが頭を押さえ、うずくまる。「滅びる」という単語を耳にした
「ヴィオレッタ、急にどうしたんだ?
人のいいレナルドが心配して顔を
「ごめんなさい、あなたの言う通りだわ。私も自分が王位に就いたら、
「……は? 今なんと言った?」
「だから、私は王になってはいけない人間で……あれ?」
私は
目の前では、レナルドとリアムの兄弟が
私も二人と同じように、自分自身の発言に驚いていた。思わず口をついて出たセリフとはいえ、自分が王にふさわしくないと認めてしまうなんて。
もっとも、自分の今までの行いを思えば、死んでも王位に就こうとは思えないけど……え、死んで? ちょっと待って! 死ぬってどういうこと?
全身からサーッと血の気が引いていくのを感じ、私は身震いした。
私は
でも、私にはもう一つの名前があった。
私はあの日、交通事故に
「兄さん、ヴィオレッタはどうしたの?」
「国王試験を前にして、過度の緊張に
「待って、レナルド! 私は」
レナルドの背に向かって手を
何これ!? 目がチカチカして気持ち悪い!
うめく私の脳内に、ヴィオレッタとして生きてきた十六年間の
「おい、大丈夫か!? しっかりしろ!」
レナルドの声が遠くから聞こえる。それを最後に、私の意識は
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