今日の空は青天

ぼく達は引っ越しの準備をしている。

といっても、ぼくの荷物は特に無い。

細々とした物は後また運ぶのでほとんど荷物は無いのだ。

(服とかは新しい家に行ったら用意してくれるって言ったから服も持っていかなくて良いみたいだけど、ぼくそれだと何も持っていく物が無いんだよね)


ぼく達が新しく住む家はこの山の隣みたいだ。

実は海達が住んでいる所はこの山の隣の隣でかなりデカイ神社らしい。

空はこの山の神様で海はデカイ神社の神様 (土地神でもあるらしい)なので、どちらも自分の土地を離れるのがあまり良くないらしい、なので間をとってギリギリ自分の守護する土地の隅っこ通しの所でみんなで暮らす事になったみたい。

ちなみに海と空の守護する土地は隣通しらしい。

海の守護する土地がバカデカイので隣の土地まで守護しているみたい。

(そう聞くと海って凄い神様なんだなって思うけど、普段はかなりのブラコンで弟に構ってもらえないと直ぐに拗ねる所を見てるとあまり素直に尊敬出来ないな)


「青天、準備は終わったか?」

「うん (特に準備する物なかったし)」

「なら、行こう。掴まってろよ?」

「うん」


ぼくは空の首に手回してしっかり掴まり、それを確認した空がぼくを落とさない様に抱き締めてから空を飛んだ。


「今日の天気はとても良いな」

「うん、風も気持ち良い」

「ああ、、、、ようやく、みんなで暮らせるのか、夢みたいだ。オレだけがこんなに幸せで良いのかなぁ?」

「夢じゃないよ。それに空だけの幸せじゃないよ?海達の幸せでもあり夢でもあるんだから、空が幸せそうじゃなきゃ悲しむよ?」

「そうか。うん、そうかぁ。なら、オレは幸せじゃないとな?」

「うん」


空は今まで一緒に居た中でも一番良い笑顔をしていた。

(その顔を見れただけでぼくも幸せだよ、空)


空を飛んで居る間に初めて空に会った時の事を思い出していた。

(初めて会った時、空の事を女の人だと思ってたのは黙っておこう。お風呂に一緒に入った時に男だって分かったからなぁ。まぁ、空は烏天狗で飛ぶ為に細いのは分かるけど、見た目は胸が無いだけの完璧な美女だから仕方ないよね?)


「青天、あれがオレ達がこれから住む家だ」

「大きいね」

「そうか?前にみんなで住んでいた所はこれくらいの大きさだったが?」

「、、、そうなんだ」


今まで住んで居た所も二人暮らしにしてはかなり大きかったけど、空の基準だと普通らしい。

(空が変なんじゃなくて、空を育てた海が変なんだよねこれ?どういう感覚してるんだろう?)


そんな事を考えているうちに今日から暮らす家に着いた。

どうやら他のみんなも全員、ぼく達を待ってたみたい。


「すまん。遅くなったか?」

「いや、僕達が早く来ただけだから」

「そうそう、空達は遅くなって無いよ~」

「海兄さん、会話に割って入らないでくれる?邪魔」

「ひど!俺、傷ついた~!」


陸と海がバカな会話をしている横で空と陽と陰はほのぼのとした話をしている。


「空兄さん、今日の夕飯作ってくれる?」

「ああ、良いぞ」

「あ、オレ、その、カレーライスが食べたい」

「カレーライス?」

「あ、ボクもボクも!空兄さんのカレーライス食べてみたい!空兄さんのカレーライスは食べた事無いから楽しみ!」

「良いのか?美味しいかも分からないんだぞ?」

「空兄さんのご飯は美味しいから何を作っても大丈夫。オレも空兄さんが作るカレーライス楽しみ」

「そうか!、、、なら、頑張って作るな?」


空は二人の頭を撫でながら嬉しそうにそう言った。


「あー、久しぶりに見たなこの光景」

「そうだね。空が居なくなってからは何処か寂しい感じだったもんね」


いつの間にかバカな掛け合いが終わったのか二人が空達を微笑ましく見ていた。


「なぁ、青天」

「何?」

「今日の空は幸せそうだったか?」

「今日の空?そうだね」


ぼくは弟二人と戯れる空を見た後、顔を上に向けて雲一つ無い青空を見ながら海に答えた。


「今日の空は青天だよ」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る