第15話 開演

 モルトおすすめの店で食事をした店を出る。


「それにしてもよくあんな量食べきれますね」


 店で出た料理はどれも山盛りで、到底二人で食べきれる量ではなかったが、なんとモルト1人ですべて食べきってしまったのだ。


「おいおい、あのくらい食べられなきゃこの先やって行けないぞ」


「この体にあんな量はいるわけないじゃないですか」


 適当なことを言うモルトに苦笑しながらお腹をさする。

 少女の身体になり相応の食事量となったが、今後も冒険者を続けるのならば確かに相応のカロリーを摂取しなければいけないだろう。


「そういえば、リーザさんたちは結局来なかったですね」


「そうだな、後で行くといったからあの量を注文したのに結局俺が全部食べる羽目になったぜ」


「やっぱり、あの量はリーザさんたちの分含めてたんですね……」


「当たり前だろ。流石にあの量を普段から食べてたら食費がかさみすぎるわ」


 さっきまでと真逆のことを言うモルトに呆れる。

 そのことをモルトに言おうとしたとき、市場が少し騒々しいことに気が付く。


「なにかあったんでしょうか」


「スラムの奴らが何かしたのかね」


「スラムですか……」


「どうした、スラムに何か嫌なことでもあるのか?」


 苦虫を噛み潰したような表情を見たのだろう。モルトに事情を聞かれる。


「スラム自体には特に何もないですよ。ただ、この街に来る前に盗賊に襲われたのを思い出していたんです」


「盗賊か。最近は少なくなってるが、よく無事だったな」


「まぁ、力だけはあるので」


「そうだな。力だけはいっちょ前だな!」


 気を利かせてくれたのか、モルトはそれ以降別の話題に切り替えてくれた。


「にしても、ただ事じゃなさそうだなこれ」


「そうですね。何か嫌な雰囲気がします。それに、さっきから誰かが戦っているような気配もします」


モルトが厳しい表情となる。

モルトの言う通り、市場の奥からただ事では済まされない雰囲気が漂っている。


「もしかしなくても、リーザ達はこれに巻き込まれたのかもな」


「とりあえず向かいましょう」


「あぁ、急ぐぞ」


 そういって走りだしたモルトの背に追従する。



***


現場と思われる場所には、リーザとセーラが見覚えのある男と対峙していた。


「なんで……」


 なんで生きていると考え、自身が逃がしてしまったからだと結論を出す。

暴漢の男、ガイはメルトとの戦闘から逃げた後、アテナルのスラム辺りに逃げ込んだ後何かがありこの騒動を引き起こしたのだろう。


 周囲にある数名の死体からこの騒動の大きさがうかがえる。

 もしあの時、ガイを見逃していなかったらこんなことは起きなかったかもしれない。そのような自責に押しつぶされそうになっていると、ガイに肩を掴まれた。


「おい、大丈夫か。酷い顔だぞ」


「い、いえ、大丈夫です」


「何があったかは聞かないが、無理すんなよ」


 メルトを気遣うモルトに申し訳なさを感じる。


「大丈夫です。戦えます」


「そうか、ならさっさとこの騒動を収めないとだな」


 気遣う表情のモルトはメルトの答えを聞きすぐに表情を切り替える。それはいかにこの場を収めるか考える者の表情である。

 メルトも心を落ち着かせるために深呼吸をして指示を仰ぐ。


「わかりました。それでどう動きますか」


「そうだな、あの男がリーザから離れたタイミングで俺が攻撃を加える。それ以降は俺とリーザがメインで戦うからお前が魔術でサポートしろ」


 指示を出し終えたタイミングで男がリーザから距離を取った。


「それじゃ頼んだぞ」


 そう言い、モルトは駆けだして男に大剣の一撃を浴びせた。


「助太刀に来たぜ!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る