最期の消失

春嵐

01 start & epilogue.

 何がどうというわけではないけど、ただただ、生きづらかった。

 特に過不足のない人生。平均の上に平均を塗り固めたような、そんな普通の日々。

 いつからか、死ぬことが夢になっていた。美しく、綺麗に死にたい。踏切の前とかに立つと、誰かを助けたいなと、ちょっとだけ思う。誰かの不幸をたちきって、自分だけ都合よく死にたい。そんな、ちっぽけな夢。人はいつか死ぬので、この夢は必ず叶う。だから、少しでも可憐な死にかたがいい。

 ポケットの中。震える携帯端末。恋人からの定期連絡。ごはん。お風呂。諸々の準備が完了した。そう書いてある。彼がかいがいしく準備してしまうから、いつも生きてしまう。彼のごはんを美味しいと思うわたしも、たしかに存在する。

 そろそろ帰ろうか。

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