第106話 エッチなクレア

 真っ暗な世界で、ルイを呼ぶ声が聞こえる。

 だがその言葉は届かない。

 それでもルイを呼ぶ声は優しく続く。

 その声は真っ暗な世界からルイをまどろみの世界へと意識を起こした。

 まるでシャボン玉の膜を通して見ているような見慣れた部屋。

 暗く薄っすらと青い空間で、まだ夜更けだということがわかる。



「ねぇ、ルイさん?」



 少し拗ねたような、甘い声色がルイを呼んだ。



「クレア?」


「起きてくれましたか?」



 ぼんやりとした視界の先で、クレアがルイの上に座っていた。

 身体の線は細く、腰がキュッとくびれている。

 細い華奢な肩から伸びるすらりとした腕を、白いシースルーのネグリジェが可憐かれんにする。

 ネグリジェは首元と胸のすぐ下にある青いリボンで結ばれているだけで、その間に位置する胸元は大きくはだけていた。


 身体を見ていたルイの視線に気づいたクレアが、結ばれていたリボンを解く。

 羽織るタイプの下に着ているネグリジェの胸元はハーフカップのデザインになっていて、クレアの毬のような胸を半分くらい露出させていた。

 鎖骨の少し下の辺りから膨らんでいて、谷間が胸のやわらかさを強調しているように見える。



「ん? …………どうした?」



 まだ半分意識がまどろみのなかにあるルイが、クレアに訊ねる。

 寝ぼけ気味のルイではあったが、らしくないクレアの様子に言葉をかけた。

 声をかけられたクレアは、そのまま四つん這いになってルイに近づいてくる。

 ネグリジェはブラのようにクレアの胸を支えることはなく、ルイの目の前で深い谷間を見せていた。



「ボォーと見ていたので、見たかったのかと」



 石鹸のようでフローラルな香りが近づいてきて、クレアが布団のなかに入ってくる。

 クレアが動くたびに、ルイの目の前にある胸が揺れている。

 金色の髪がルイにかかり、さらさらとした感触がルイの頬を撫でた。

 お互いの顔が三〇センチと離れていない距離。

 クレアの切れ長で大きな目が、気持ち潤んでいるように見える。



「三ヶ月って言っていたのに、遅かったと思うのですが?」


「最初数えるのを忘れていて、ざっくりとしか把握していなかったんだ」


「私はこよみを数えていたのに?」


「わるかったよ」


「ルイさんが戻ってきても、みんながいたので全然お話ができないし」



 近くで見るクレアは、少しいつもより頬が赤い。

 それは頬だけではなく、首元から胸元も若干ピンク色に見える。



「聖都に戻るときも、ルイさんは私の騎士なのにゴードンたちに取られちゃうし」


「ゴードンたちはクレアと違って、軍や任務のときしか顔を合わせないから。

 俺も離れていた期間のことを聞いておきたかったんだよ」


「そんなこと知りません」



 拗ねたようにクレアは言うと、ルイの頭を抱えて唇を重ねてきた。

 ルイたちの身体は密着し、クレアの胸が押し付けられて形を変える。

 それでもクレアは離れようとはせず、何度もキスをしてきた。



「もしかして、酔ってるか?」



 クレアがしてきたキスは、少し白ワインの香りがした。

 ルイは最後にお風呂に入ったのだが、出たときはユスティアの付添でクレアもワインを飲んでいた。

 シュプリームでも飲んでいたので、それを考えるとそこそこ飲んでいることになる。

 だがルイはここ数ヶ月屋外での生活だったためか、家に着くと疲れを感じていた。

 そのため二人を残して先にベッドに入ったのだ。



「ん~、確かに、少し酔ってはいます」



 いつもと少し様子が違うクレアだとルイは思ったが、酔っているのであれば多少変わるのも頷ける。



「酔ってるから、少しだけ大胆になってるかもしれないです」



 そう言うと、クレアはルイの手を取って胸に押し当てた。

 クレアが着ているネグリジェは生地が薄く、感触がほとんどダイレクトに伝わってくる。

 ルイの指に弾力で抵抗するように形が変わっていた。



「先生ほど……ではないですけど、小さくは…………ないんですよ?」



 ルイの耳をついばみながら、耳元でクレアが跡切れ跡切れに言ってくる。




「今なら…………ルイさんの好きに………………して……も………………」



 それ以上最後まで言葉は続かず、そう間を置かずにクレアの息が耳元で聞こえてきた。

 クレアは身体を完全にルイに預けてしまっていて脱力している。

 規則正しい寝息がルイの耳をくすぐった。

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