第2話 いきなり出てきたアイドル
二次元アイドルのナナミャン推しのタクヤの所に、いきなり現れた三次元ナナミャンことナナちゃん。
そんな衝撃から3日が過ぎた。
タクヤは夢だと決めつけていた。
ただうちわはあれ以来怖くて使っていない。
暑くて使いたいのだが使っていない。
そんないつもどおり暑い夜。
窓から強い風がカーテンを揺らしながら部屋の中へ。
急いで窓を半分閉める。
暑い部屋に横になり
タクヤ「暑いな〜」
ついつい口にする独り言。
ナナ「ホント暑いよね!この部屋は!」
タクヤ「はっ!わっ、わわわ!」
ナナ「私よ。私!」
タクヤ「うちわ使ってないのになんで?」
ナナ「えっ?そーなの?」
タクヤ「あっ、さっき窓から結構強い風入ってきたわ。」
ナナ「じゃあフィギュアに風あてると私が出てくるのね。」
タクヤ「あの、出てくる時のピピピピって音とか光は?」
ナナ「あー、そういえば音しなかったな。」
タクヤ「それっていつも演出かわるの?」
ナナ「わかんないけど、それ大事?」
タクヤ「いや。別に。」
ナナ「あー、久しぶりだなー。三次元。」
タクヤ「二次元の記憶ないんだっけ?」
ナナ「あったらヤバいんじゃない?」
タクヤ「なんで?」
ナナ「だって生活の全てを私に見られてるって事でしょ。」
タクヤ「それは困る。」
ナナ「大丈夫よ。見えてないから。っと言うより記憶あまりないから。」
タクヤ「それなら安心。」
ナナ「タクちゃんは昼間何してるの?」
タクヤ「ビデオ屋のバイト。」
ナナ「いいなー。」
タクヤ「ビデオ屋のバイトが?」
ナナ「そうじゃなくて。私1時間限定人間だから何もできないじゃない。」
タクヤ「1時間でどっか行く?」
ナナ「それ厳しな。」
タクヤ「じゃあどっか行きたくなったら。」
ナナ「考えとく。」
タクヤ「ナナちゃんって何歳?」
ナナ「22歳の設定じゃなかったっけ?」
タクヤ「ナナミャンはね。」
ナナ「じゃあ同じじゃない?」
タクヤ「そーなの?」
ナナ「多分。」
タクヤ「じゃあ俺の2歳下だ。」
ナナ「えっ!!」
タクヤ「何故驚く??」
ナナ「30歳くらいかと…」
タクヤ「老けてるのは知ってる。」
ナナ「大人っぽい…かな。」
タクヤ「いーよ。無理やりフォローとかしなくて。」
ナナ「仕事以外は何してるの?」
タクヤ「家にいる。」
ナナ「つまんなっ!」
タクヤ「えっ?」
ナナ「あっ、いやいや。」
ナナ「趣味とかは?」
タクヤ「この部屋が物語ってるけど。」
ナナ「なるほど。そーだった。」
タクヤ「質問大会?」
ナナ「私はさ、聞かれても自分の事よくわかんないし。」
タクヤ「ナナちゃんは趣味は?」
ナナ「読書って設定じゃなかった。」
タクヤ「ナナミャンはね。」
ナナ「じゃあ同じで。」
ナナ「だからさっ、私に聞くよりタクちゃんの方が知ってるでしょ?」
タクヤ「まっ、そっか。」
タクヤ「この前消える時さ、ネックレス赤く点滅してたけど音は鳴らないんだ。」
ナナ「鳴るよ。」
ナナ「あっ、バイブになってた。」
タクヤ「消音機能とか付いてるんだ。」
ナナ「まあ、夜中でも出入り自由って感じじゃない?」
ナナ「それよりー!全然呼んでくれないじゃん。もっと呼んでよ〜!」
タクヤ「いゃ〜、あの日の事は夢かなって思ってさ。それからうちわ使ってなかった。」
ナナ「もーっ!疑い深い!」
タクヤ「こんなの今でも半信半疑だし。」
ナナ「もっと呼んでよねっ!」
タクヤ「はー。」
ナナ「でも暑すぎない?」
タクヤ「エアコンないから。」
ナナ「エアコン買ったら?」
タクヤ「毎年悩んで買わない。」
ナナ「なんで?」
タクヤ「だって、引越すかもしれないし。」
ナナ「引越しするの?」
タクヤ「彼女とかできたら狭いから。」
ナナ「じゃあエアコン買った方がいいんじゃない?」
タクヤ「どういう意味?」
ナナ「だって彼女いないじゃん。」
タクヤ「今はね。」
ナナ「いつからいないの?」
タクヤ「聞く?そういうの。」
ナナ「えっ!?もしかして。」
タクヤ「はい。生まれてこのかた彼女できたことありません!」
ナナ「やっぱり。」
タクヤ「わかってたらあえて聞く必要ないんじゃ…」
ナナ「エアコン迷う必要ないじゃん。」
タクヤ「うーん。でも今年はいいかな。」
ナナ「でも、暑い!」
タクヤ「いいじゃん1時間なんだし。」
ナナ「まっ、そっか。」
タクヤ「全然アイドルじゃない。」
ナナ「だから、現実なんてきっとこんなものなのよ。」
タクヤ「あー、夢が〜。」
ナナ「あっ、ゴメン、ゴメン。」
少しこの感じに慣れてきたタクヤ。
深く考えはしなかったが、こんな穏やかな日々がくるなんて夢にもみなかった。
ホントに現実なのか不思議は続く。
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