1日1時間の推しアイドル
オッケーいなお
第1話 うちわで仰ぐと
世の中オタクと呼ばれる人達がいる。
この男、タクヤもそうである。
タクヤは二次元アイドルのナナミャン推しであったが意外とマイナーで知る人は少ない。
と言うより、たとえ知る人が沢山いても友達もいないので話す人もいない。
ビデオ屋のバイトが終わり家に帰って、コンビニ弁当を食べる。
その後はシャワーに入り、ナナミャンのポスターやフィギュアを眺めナナミャンの動画を見る。
至福のひと時である。
タクヤ「ナナミャンおやすみ。」
そんな風に話しかける毎日。
一人暮らしのこの部屋は一般的なワンルームでナナミャン一色のわかる人にしかわからない部屋だが、本人は気に入っている。
タクヤはそんな平凡な日々を送っていた。
この日までは‥‥
今日もコンビニ弁当を買って急いで帰る。
急ぐ必要なんかないのに走って。
タクヤ「ナナミャンただいまっ。」
ポスターに問いかける。
ナナミャンは二次元アイドルだが、黒髪のボブでメイクも薄めという、至って普通にいそうな見た目である。
ナナミャンをみながら弁当を食べるのもタクヤが大好きな時間だ。
今日は早めにベッドに。
暑い。
まだ8月の暑さはエアコンなしのタクヤの部屋では地獄のようだ。
うちわで仰ぐ。
タクヤ「ナナミャンも暑いよねー。」
そんな事を言いながらフィギュアを仰ぐ。
うちわを置いて横になる。
っとその時…
ピピピピー
タクヤ「な、なんだっ!!」
聞いたことのない音と、カメラのフラッシュみたいな光がピカっと。
タクヤ「あっ、わ、わ、わわわ〜」
女「ヤッホー!」
……。
女「だからー、ヤッホー!」
タクヤ「どっ、泥棒!!」
女「違いますーっ!」
タクヤ「だっ、誰!?なんでここにっ!?」
女「まず、落ち着きましょー。」
タクヤ「はっ??」
女「はいっ、深呼吸!」
タクヤ「スーウ、ハー」
タクヤ「じゃなくてっ!誰!」
女「ナナミャン!」
タクヤ「はっ?」
女「だから〜、ナナミャン!」
タクヤ「……。」
女「…ちょっとー、恥ずかしいんだからさーちゃんとリアクションしてよ。」
タクヤ「意味わかんないし。」
女「じゃあ説明するね。私ナナミャン。二次元アイドルなんだけど〜、なんか三次元になっちゃった。」
タクヤ「えっ!?ナナミャン?」
タクヤ「いや、だまされないぞ!」
女「大丈夫よ!なんか三次元になる瞬間お告げみたいな声聞こえて、1日1回1時間限定三次元ツアー!って言ってた。」
タクヤ「なんだそれ?」
女「それより〜、私がナナミャンって事に驚かないわけぇ!」
タクヤ「いきなり言われても…」
タクヤ「それに…」
女「それに?」
タクヤ「ナナミャンだとしたら、イメージと全然違うって言うか、見た目は完璧だけど、う〜ん、なんか性格が、かな〜?」
女「ちょっとー!どーいう意味!!」
タクヤ「だってー、話し方とか可愛くないからさー。なんとなく…」
女「あのねー。そんなのは妄想のしすぎ!」
タクヤ「はー?」
女「うれしいのっ!うれしくないのっ!」
タクヤ「あっ、はい!うれしいです!」
女「よろしい!じゃあナナちゃんって呼んでね。」
タクヤ「え〜!?ナナミャンじゃなくて?」
女「ナナミャンとか呼ばれたくないしぃ。」
タクヤ「でもナナミャンじゃないの?」
女「そうらしいけど、三次元に来ると二次元の記憶あまりなくて。なんとなくって感じ?だから若干人格も変わるんじゃない?」
タクヤ「若干??」
女「な ん か文句ある?」
タクヤ「いえ。ありません。」
女「じゃあナナちゃんで。」
タクヤ「ナナちゃん。」
ナナ「あなたの名前は?」
タクヤ「タクヤです。」
ナナ「タクちゃん!」
タクヤ「タクちゃん??」
ナナ「まっ、よろしく!」
タクヤ「で、いつまで三次元にいるの?」
ナナ「このネックレスが赤く点滅したら3分前みたいだよ。」
タクヤ「なんかあれに似てない?」
ナナ「ジュワッチ!」
タクヤ「それ二次元の世界でも有名なの?」
ナナ「なんか記憶が曖昧で、今の私は元から三次元にいたような偽の記憶があると言うかなんて言うかー?」
タクヤ「そーなんだ。」
ナナ「まっ、細かいことは気にしない。」
タクヤ「なんで三次元に出てこれたの?」
ナナ「タクちゃんがなんかしたからじゃないの?そこは知らないんだ。今日なんか変わった事した?」
タクヤ「えっ??」
タクヤ「あっ!」
ナナ「えっ?なになに!?」
タクヤ「うちわで仰いだ。」
ナナ「フィギュアを?」
タクヤ「うん。」
ナナ「マジで…。」
タクヤ「あの〜、ドン引きするのやめてもらっていいですかー。」
ナナ「だってさぁ、フィギュアだよ。」
タクヤ「でも、あなたはそのフィギュアから出てきたんでしょ?」
ナナ「あっ。そっか。」
ナナ「なんか複雑…。」
タクヤ「三次元にいる感想は?」
ナナ「記憶曖昧だから、私的には元から居るよーな〜、だから特別感は全然ないかな。」
タクヤ「へー。」
ナナ「後、二次元アイドルの記憶もうっすらとくらいだから、夢壊したらゴメン。」
タクヤ「それは大丈夫。ナナちゃんはナナミャンと別で考えてるから。」
ナナ「それっていい意味で?」
タクヤ「あっ、えーっと…」
ナナ「なるほどぉ〜。」
タクヤ「悪い意味じゃないっ、から…」
ナナ「言葉つまってるじゃん!!」
タクヤ「あっ。」
ナナ「まっ、よしとするか。」
と、こんな感じでいきなり出てきた二次元アイドルのナナミャンとタクヤ。
この先タクヤはどうなるのか?
1日1回1時間限定の不思議な話はまだまだ始まったばかり。
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