第4話 お正月と言えば

 大晦日おおみそかを素っ飛ばしていきなり新年の話になります。お正月と言えば、何が思い浮かぶでしょうか。

 お年玉は貰える側の時は嬉しかったのですが。まあ、そういう年齢になりました。

 あとはお節でしょうか。栗きんとん、黒豆、定番の一品ですが甘いです。子供の時の私でも甘くて、その隣にあるカズノコやタケノコを食べていました。甘ければ子供が喜ぶという発想を定着させた大人が憎たらしいです。今の私はその対象となる大人なのですが。

 でも、このお節。食べない家もあります。私の友人の一人がそうでした。新年を迎えても朝はパン食で、昼食も至って普通。晩御飯は焼き肉とビールで盛り上がるそうです。

 私はにこやかな顔で、えー、と心の中で思いました。で、話を戻します。


 お正月と言えばお雑煮ですよね。私は一番に思いました。我が家は昆布、それとイリコやアゴ(トビウオ)で出汁を摂ります。ほんのりと醤油が香る澄まし汁で表面を少し焼いたお餅を入れて食べます。

 場所によっては白味噌のところもあります。甘ければ子供が喜ぶ、という話は先程しましたので割愛します。

 具に入れるお餅なのですが、実は農家の方に作って貰っています。その方はもち米を栽培しています。収穫した稲は天日干しで乾かし、自宅でふんわりと蒸し上げます。庭に石臼いしうすを出してきねでつき、丁寧に手で丸めます。その工程を初めて見た時は掛かる手間に感動を覚えました。あ、注文すると角餅にもして貰えますよ。

 このお餅、とてもよく伸びます。あと汁で少しくらい煮てもドロドロに溶けることがありません。何より、美味しいです。いつも多めに買って余らせます。冷凍庫で保存すると長持ちするので小腹が空いた時に大活躍します。

 今年も注文してきました。少し心配なのが生産されている方が高齢の域に入るので、いつまでこの美味しいお餅を食べられるのか。その点が少し気掛かりではあります。今年分は電話で確保できました。元気の証と受け取って、大晦日の手前でお餅を貰いに行きます。


「本年は大変お世話になりました。どうぞよい年をお迎えください」


 農家の方からお餅を受け取る時のいつもの言葉。今年は、より心を込めて言いたいと思います。

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