💔恋も仕事も失って異世界に飛ばされたと思ったら天使さまに拾われました

朝比奈 呈🐣

天使さま?に拾われました

第1話・ああ。無情


「はあ? なにこれ?」


 寒空の下、私の頭に浮かぶのは疑問符ばかり。いきなりの場面展開に理解が追いついてこなかった。さっきまで私はクリスマスイブに浮かれる街中の中にいたはず。

 それがどうして誰もいないだだっ広い広場に、たった一人で取り残されたことになったのか意味不明で呆然とするしかない。


 考えられるとしたらこの世界の中に神も仏もないのかバカヤロウ!と、心の中で罵倒したせいだろうか?


 でもあんまりだと思う。自分が不憫過ぎて泣けてくる。


 年の瀬が近づく中、非情にも会社からはあり得ない失態を押しつけられて解雇処分になるし、心の頼みとする彼氏には先ほどこっぴどく振られて心がささくれ立っていた。

 彼氏には「おまえには飽きた。やっていけない。別れる」と、宣言され、これから彼女が来るから邪魔するなと着の身着のまま追い出された。こんな寒い中、どこに行けと?


 納得が行かないまま、アパート二階の彼の部屋から出て階段を降りると、向こうからボア付きのふさふさしたコートを着た、可愛らしい系の格好の派手な顔立ちの女性が近づいてくるのが見えた。何となく嫌な予感がしてアパートの影に隠れてみていたら、なんとその女性は義妹に良く似ていた。


──ミーナ?


 その女性はブーツでトントントンと軽快な音を立てて階段を駆け上がる。

 そして奥から二番目の部屋の前に立ちインターフォンを鳴らした。私が追い出された彼の部屋だ。


「待っていたよ。美奈子」

「お義姉ちゃんは?」

「あいつはうざいから追い出した。しばらく帰って来ないさ」

「悪い人ね」

「おまえだって人のこと言えないだろう? まあ、寒かっただろう? なかに入れよ」


 その名前は聞きたくもない名前だった。美奈子は私の父が再婚した女性が産んだ娘だった。赤子の時から可愛くて皆にちやほやされていた気がする。私は産みの母が亡くなっていたのと、実母が孤児で実父も両親がすでに亡くなっていたことから祖父母という存在を知らずに育った。

 義母の両親はあからさまに孫である美奈子を可愛がり、私を邪険にした。父は仕事で忙しく家の事は全て義母任せのところがあった。義母を信じていて、義母の両親がちょくちょく家にやってきては美奈子を溺愛し、私に「ただ飯ぐらいの居候が」と悪口を言っていたのも知らないようだ。

 義母や祖父母らに甘やかされて育った美奈子がまともに育つはずもなく、要領の悪い義姉の私を見下し馬鹿にした。そんな彼女に彼氏の雅貴が奪われたのは相当なショックだった。


 雅貴も雅貴だ。どうしてよりによって美奈子なのか?


──許せない! どうして私ばかりこんな目に! 


神さまの馬鹿っ。馬鹿、馬鹿と罵っていた。そしたらこんな知らない場所にまで来てしまって泣けてくる。


「私が一体、何をしたというのよ。これからどうしたらいいの? 酷い、酷すぎる」


 ああ。無情。もう神さまなんて信じない。だって私ばかりこんな目にあわされてさ。この世に神さまがいるなら助けてくれてもいいんじゃない?

 と、嘆いていたときだった。

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