様々な種類のドラゴンが存在する世界、龍に乗ることを生業とする一家に生まれた主人公の、龍との出会いとドラゴンライダーとしての成長の物語。
いわゆるハイファンタジー、それも王道のジュブナイルです。ざっくり大まかに要約するのであれば、少年が大きなドラゴンと心を通わす物語。この辺、テーマというかモチーフが一貫していて、おそらくは上記の絵面から期待するであろう物語を、もうこれでもかってくらいに味わわせてくれます。人語を解さない巨大生物との交流、それもタグの言葉を借りるなら「バディ(相棒)」もの。もうこれだけでたまらん人にはたまらんやつ(たまりませんでした)。
特色というか、読み始めてすぐに圧倒されるのが固有名詞です。この世界特有の語、漢字とルビを使って表されるいろんなものの名前。主として各種ドラゴンの名称なのですけれど、その豊富さや次々出てくるところが特徴的でした。特に序盤の、一気に畳みかけてくるようなドライブ感。名前だけの登場であっても、それらがしっかり世界に奥行きを与えているような感覚。ファンタジーらしい雰囲気に浸らせてくれます。
お話の筋はまさに王道の中の王道、少年の日の冒険の物語です。特に中盤以降のアクションシーンは圧巻でした。ドラゴン同士の空中戦。迫力があるのはもちろんこと、もう単純に敵のドラゴンさんが好きです。えええ何この人格好良すぎる……個人的な趣味の話で申し訳ないのですけれど、こういう見た目にわかりやすい強キャラ的なやつに弱くて、でもそれを果たしてどのように撃退するのか、その一進一退の攻防にも見応えがありました。各ドラゴンごとに特色というか、それぞれ違った能力があって、それを生かした戦いというのが素敵。みんな大好きなやつ。
楽しかったです。空のワクワク感を綺麗に描き出したお話。少年とドラゴンというモチーフにどこまでも誠実な、心躍る冒険と成長の物語でした。児童文学的な爽快感があるよ!