暗春

ねむっぴ

第1話 記憶と出会い

  僕は自分の人生の嘘に囚われている。

明かされない嘘は真実として終わっていくのだ。小さな物なら覚える事もないだろう、しかし、それが重ければ重いほど自分には辛くのしかかる。

 

 中学一年の始まりの4月、桜がまだ咲き始め、春の訪れを知らせる頃、入学式を終え席が決まり、初の休み時間に入った。

学生達は新しく出会った他の学び場から来る生徒…所謂クラスメイトにどう接すればいいのか、自分を決める第一声をどこのだれに話しかけようかなどを考えている事だ。しかし頭の悪い僕は人間関係の事など考えれずに入学祝いに買ってもらったアクションゲームの事で頭がいっぱいだった。


 どうやって攻略しようかなどを適当な紙に書きながら楽しく考えていると不意に後ろの席の方から明るい感じの男が話しかけてきた。


「何をにやけてるんだ?もしかして好きなやつでもできたか!?」

急に話しかけられ不意をつかれた僕は少し脳の回路が停止したのか一瞬体がフリーズしてしまった。

「何かいてんだこれ?中ボス戦攻略法?」

フリーズした僕の回路が戻った時にはどうやら明るそうな男は私の書いていたノートを手に取り見ていたようだ。


「好きな人なんてできてないよ、そのノートにあるようにゲームの敵の倒し方を考えてたところだよ」

そう言うと明るい男はつまらなそうにノートを私の手に戻し話し始める。

「俺このゲーム知ってるぜ、動画で見たことあるよ、タイトルは知らないけどなんか難しい奴だろ?」

明るい男はそう言うと後ろの席に座り、頬杖をつき話の続きを始めた。

「俺の名前は勇千ゆうせんだ、勇って呼んでくれ、お前は何て言うんだ?」


明るい男が名前を聞いてくる、私はノートを書くのをやめて後ろを向いて自分の名前を教える。

「僕は暗月くらづき宜しく、千君」


そう答えると勇千が複雑そうに返事を返す。

「暗月お前、今敢えて千って呼んだだろ?まぁ、何はともあれ席が変わるまでは後ろと前の関係だ、仲良くやろうぜ!」

そう言うと千は握手を求めているのか手を僕の前に差し出した。

「うん、宜しく」

特に仲良くするのか分からないが僕も手を出し握手をするのだった。


握手を交わし、千のするたわいもない話を聞き流していると休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴る、若い女の教師が教室に入ってくる。


若い女の教師が話し始めた。

「まだ学校も初日だし、自己紹介もいいですが、交流会という事で外の桜でも見に行きましょう!」


楽しそうに話す教師にめんどくさそうにする奴、自己紹介をしなくてホッとする奴など色々な奴がそれぞれの反応をしているのを見ていると後ろから背中をつついて話しかけて来る奴がいる、千だ。

「なぁ暗月、桜だってよ、俺たち学校来る時と帰る時で二回も見れるのにな!」

正直物凄くどうでも良いと思いながらも楽しそうに話す千に答え返す。

「お前と見る桜は初めてだけどな」

そう言うと千は確かに、と言う感じで嬉しそうな顔をするのだった。


「そこ、話してないで行くよ!さぁ速く速く!」

一番楽しそうにしている教師が急かす、僕と千は席を立ち、教室から学校の外にある桜に向かうのだった。

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暗春 ねむっぴ @kagawanoelement

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