第20話『強き者はいかにして敵に立ち向かうのか』

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 私は飛行魔法を使って、オブライエンさんが乗った車を目で追いかけながら、何でも屋『ジェネシス』の事務所へと向かった。


 私はすぐさま事情を説明した。そして叫ぶようにして、私は頼む。



「お願いします。オブライエンさんを助けてください!!」



 サカイさんたちはお互いに目を合わせて、頷く。


 何も言わなくても、目だけで意思疎通が出来ているみたいだ。これが、本当の仲間ってものなのかなと、私はちょっとだけ羨ましく思った。



「お任せください。何でも屋ジェネシスは、頼まれた仕事は何でもやっちゃります。そして、必ず成功させますのでご安心を!」



 サカイさんたちは事務所を飛び出して、赤い車に乗り込む。


 運転席にはピットマンさんが、そして助手席にはサカイさんが座り、私とフェルトちゃんは後部座席に座る。



「しっかりとシートベルトをしてくれよ。あと、無駄に口を開けない方が良いぜ? 舌噛むからさ」



 ハンドルを握った瞬間、ピットマンさんの雰囲気がガラリと変わった。


 昨日は鼻くそぼじってマヌケな顔をしていたのに、今はすごく男前に見える。


 あ、あれか。ハンドル握ったら性格変わる人のなのか、ピットマンさんは――。



 と……冷静に分析している暇もありませんでした。



 シートベルトをして、なおかつどこかに掴まっていないと吹き飛びそうになるくらいの走りをピットマンさんはするのです。


 加速でノリに乗ったスピードを、ブレーキを思いっきり踏むことで減速。体が前のめりになったかと思えば、ふわりという浮遊感が襲ってきて、私の体が今度は左へと傾く。


 車から見える景色が横に流れていき、キィィィィィイイイイイ!! というタイヤが擦れる音と共に、白い煙をモクモクと出している。



 何で車が横になりながら進んでいるのよぉぉぉおおおおお!?



「おい、ナオシ! ちゃんと追跡は出来ているんだろうな? 全然現れないぞ、白いバンなんて」


「あ、ああ……。し、シロッ、白いバンなら、この先の廃工場に停まってるぜ」


「なるほど。へっ! 俺の車でケツ掘ってやろうと思ったのに残念だ」


「ああ。まったくだな、うっぷ……!?」



 ヤバい。サカイさんがこの揺れに内臓が負けている。これ到着しても、サカイさん使い物のならないんじゃ……いや、そんな事ないよね! だって、この前感じたあの信頼感が事務所を出る前はあったし、現場についても大丈夫――だと、思っていたのは私の勝手なイメージでした。



 オブライエンさんをさらった男どもが使っていた白い車が止まっている使われていない廃工場に着くなり、サカイさんが勢いよく外に飛び出した。一刻も早くオブライエンさんを助けに行かなくちゃいけない。だから、ピットマンさんの運転になんて負けている暇なんてないよね!


 さすがはサカイさんです。車から飛び降りたところなんて、カッコよかったですよ!



「さ、さー。オブライエンさんを、助けに、いくぞー」



 と思っていたらこの覇気のない声と、ゲッソリしている顔。


 どうやら、ピットマンさんの運転には勝てなかったようです。



「大丈夫ですか、サカイさん」


「あ、ああ。問題ないよ。すまんね、肝心の俺がこんな調子で」


「い、いえ。待っていてください。今治癒魔法を」



 私は呪文を唱えてサカイさんに治癒魔法をかけてあげた。これで気分も元に戻っていつものコンディションで動けるはず。



「お? おお、すげー。ありがとうマクファーレンさん。気分が良くなったよ」


「どういたしまして。ところで、どうやってオブライエンさんを助けるんですか?」



 そう、ここまで来てなんだが、私はサカイさんたちがどうやってオブライエンさんを助けるのかが分からない。武器らしい武器も持っていないし、魔法の杖も持っていない。


 じゃあ、どうやってあいつらに対抗を……? 相手はオブライエンさんを誘拐して身代金を要求するようなやつら。武装してないはずがない。



「どうやってって、そんなん決まってますよ」



 サカイさんは淡々と言い放つ。



「――真正面からですよ。ジェネレート、コード:フェルト」

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