第16話『異端者と彼女』
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「はぁ……つまんないなぁ」
私がまだ一人ぼっちだった頃の話。
黒いローブに身を包み、昼食のサンドイッチをパクパクと丁寧に食べる。
青い空の下、魔法学校の一番高い場所――時計台の屋根の上で私は一人ぼっち。
本当はこんな場所に登っちゃいけないけど、そのルールがあるおかげでここには誰も来やしない。一人になるには最適だった。
こんな私と友達になる人なんて誰もいない。
一六歳の女の子は、くだらないグループを作るのが当たり前。その小さな世界で女王様気取る奴と、それにヘコヘコと従う家来たち。傍から見ていて、とっても滑稽だった。
だけど、それが学校生活での暗黙のルールと化している。
「友達……ねぇ」
私は校舎の庭で、仲良さげに昼食を食べる人たちを見てまた呟く。
そこには笑顔があり、笑いがあり、青春とも言える一ページがそこにあった。
別にリーダーになって家来を作る事など簡単だ。私が持っているこの才能を持ってして、力で無理矢理従わせてやればいい。そうすれば私の周りには常に人がいて、今私が見ている人たちみたいにワイワイと昼食を食べる事ができるだろう。
だけどそれは偽りだ。
それはただ脅しているだけで、友達とは程遠い存在。それこそ私の“操り人形”の様なモノと化す。
「はぁ……へぶぅ!?」
何回目の溜息か分からなくなった時、私の目の前が真っ暗になった。
一体何事かと、顔に覆いかぶさった紙を剥がせば、それはチラシ。
――犯罪じゃなければ何でもやっちゃります!
依頼を希望の方は何でも屋『ジェネシス』の事務所まで!
「……何これ」
見た事も聞いた事もない。クリオタウンにそんなものがあっただなんて。
まぁ、私が知らないってことは大したことないんだろうな。
「…………」
だけど、下にいる楽しそうにする生徒を見るたびに、私の中に眠っていた欲が溢れ出てくる。
本当は仲の良い友達が欲しい。心許せる友達が……欲しい!
一人ぼっちが続くなら、こんな魔法の才能なんていらなかった。こんな辛い思いをするくらいなら、みんなと同じが良かった。紙きれ一枚浮かすのに四苦八苦してた方がマシだ。
じゃあどうすればいい?
この状況をどうにかしたいのなら、まずは自分で行動を起こすのが一番よね。
でも私一人ではどうすればいいか分からない。なら、誰かに助けを求めればいい。だれもダメだとは言っていないのだから、頼ればいいんだ。
「午後の授業は……サボっちゃお」
この日、私は初めて授業をすっぽかした。
何でもできるからと言って授業を受けなくていいわけじゃない。そんな舐めた態度を取っていれば、才能はあっても人格に問題があると判断されてしまうからだ。
先生にはとっても優秀な生徒で通している。
まぁ、それがクラスメイトの癪に障るみたいで、孤立する一つの要因なんだろうけど。
何をしても敵を作るばかりの私。口うるさく敵対心を向けてくるマーガレット=オブライエンとかいう人もいるし。
「マクファーレンさん? いったいどこに行こうというのです? もう午後の授業が始まりますわよ?」
私が学校から出ようとしたらほら、こうやって突っかかってくる。
てか、面倒くさい人に会っちゃった。よりにもよってコイツと鉢合わせするなんて。
「別に私の勝手でしょ?」
「そういうわけにはいきません! 授業を放り出すだなんて言語道断。さぁ、次は魔法による決闘の授業ですわよ。ふふふ……今日こそアナタを負かせてみせますわ!」
「じゃあ、今ここでやろうよ」
魔法の戦闘術の授業はそんなに危険なものじゃない。しょせん学校でやるのは相手の武装解除術や防御術を学ぶ――つまり自衛のための授業。
「良いでしょう。マクファーレンさん、あなたを負かし、真面目に授業に出てもらいますわ!」
そう高らかに宣言するマーガレット=オブライエン。
そんなことを言っている暇があったら私の杖を取り上げればいいのに。
「スティール」
ものを奪う魔法を唱えた。
マーガレット=オブライエンの手から杖が抜け、私のもとへとやってくる。
それを私はしっかりキャッチして言ってやった。
「はい、私の勝ち。じゃあね」
奪った杖を投げて彼女に返し、学校を去った。
後ろからなんか叫び声が聞こえたけど、私はその声も聴かず、無視して歩みを進めた。
確かにマーガレット=オブライエンは優秀な魔法使いで、この学校においてもトップの成績を修めてる。魔法の名家の娘である彼女は確かに他の人たちと比べて座学もできるし、実技の魔法の授業もいい成績を出している。
だけど正直、私には遠く及ばない。下手をすれば先生よりも高度な魔法を扱えるこの私に敵うはずがないんだ。
ホント、こんな異端者と友達になってくれる人なんているのかな?
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