第14話 財布※
俺は財布。財布の中でも長財布の部類だ。俺の所有者は、青山和樹っていう大学生だ。
俺と和樹は今電車に乗っている。彼女の里奈とかいう女とデートに行くらしい。今日は朝から和樹もかなり機嫌が良い。
だが、俺にはとんでもない問題が今起きている。和樹が俺を尻ポケットに入れてるんだ。これじゃあ確実に俺は盗まれる。今までも何度か盗まれそうになったのに、和樹は懲りていないようだ。こんなにだらしないと、いつか里奈に振られるだろう。
俺はよく悪い奴に狙われる。なぜなら腹に沢山お金やカードが入っているから。しかも大体悪い奴は男でうんざりだよ。かわいい姉ちゃんだったらまだ許すけど。
数分もしないうちに、案の定悪い奴が近づいてきた。また男だ。そしてスッと俺を和樹の尻ポケットから引き抜いた。和樹は気づかずにスマホを触っている。声が出せない俺は、必死でオーラを出した。だが、和樹に気づかれないまま俺は悪い男のバックの中に入れられた。
*
しばらくして、お金とカードを盗まれた俺は、川に捨てられそうになった。俺もこれまでか。和樹とももう会えないのか……。俺は悲しくなった。
その時、少し離れた所に人が立っていた。俺はその人を見て安心した。警察官だ。警察官はすぐにこちらに走ってきた。
それに気づいた男は、俺を持ったまま逃げる。だがすぐに捕まった。
*
それから俺は警察に預られ、男は逮捕された。
数時間後に和樹が俺を探しにやって来た。隣には里奈っぽい女もいる。ここだよ!
「良かった。あった」
「あんたしっかりしてよ。もう」
「ごめんって里奈」
やはり隣にいる女は里奈だった。里奈も呆れている。とりあえず俺は、無事に和樹の元に帰ることが出来た。
それにしても和樹の馬鹿野郎。里奈だけじゃなくて、俺もちゃんと守れよ!
※成仏できない幽霊さんより
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