第12話 エアコン
とても暑い夏のある日。俺は部屋に凍るほどの冷風をゴーゴーと出し続けていた。
何故って? この家のクソガキが、エアコンの温度を一番低い十九度にして出かけたからだよ。しかも風量は強風だから、とてもエネルギーを使う。だがリモコン様には絶対に逆らえない。
外の室外機は俺の尻に当たるところ。外は三十度越え。外には熱風を出し続けている。もうフル稼働でどうにかなりそうだ。
*
一時間が経過した頃、ここの家のクソガキが友達を連れて帰って来た。俺は部屋を冬くらい寒くして休憩に入っていた。
「うあー極楽!」
「涼しい!」
クソガキと友達は、俺の苦労も知らずに幸せそうな顔で部屋に入って来た。俺はムッとした。だが今は休憩中だから、休憩に専念した。
「なー。もっと冷やして冬みたいにしようよ」
「いいね!」
俺はクソガキの発言に怒りが湧いたと同時に、激しい憂鬱に襲われた。そしてリモコン様を俺に向けたクソガキは、風量ボタンを何度も押して再び強風にした。リセットされた俺の体は、再び凍るほど冷たい強風を出す運命となってしまった。
俺が人間だったら確実に殴っていただろう。それに誰もが俺に同情するはず。下手したら殺すかもしれない。何故殺すまでするかって? クソガキと友達は、部屋を冷やしておきながら毛布を被ってテレビを見ているからだよ。俺は怒り任せに、ただただ強烈に冷たい風を出し続けた。
*
二時間が経過した頃、友達は帰っていった。外は暗くなってきている。それなのにクソガキは、俺を止めずに部屋を出た。
その時、パチンという音がした。トイレに行くまでに点けて行った電気で、遂にブレーカーが落ちたようだ。俺はこれでやっと休むことが出来た。
廊下から「痛い」というクソガキの声が聞こえてきた。薄暗く、電気も点かなくなった廊下で転んだのだろう。俺は心がスカッとした。俺を酷使した罰だ。
それに俺をフル稼働させた分の電気代も、家の人が払わないといけないからそれも罰だな。ざまあみろ!
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