第10話 自動販売機

 僕はとある町の自動販売機。この町に来て5年になる。


 今僕は、十円玉に飢えている。お釣りで渡してしまったため、一枚も残っていないのだ。僕は十円切れの赤ランプを光らせて、十円を入れてくれる人を待っていた。


 数時間後、一人の小さくて可愛い女の子がやって来た。後ろからお母さんもついて来ている。


「お母さんがお金出すから大丈夫よ」


「嫌だ。真由美が自分で払いたい!」


 女の子は自分で飲み物を買いたいと、小さなピンク色の財布を出した。中には十円玉が沢山入っている。お小遣いを貯めていたのだろう。


 女の子は十円玉を沢山入れてくれた。とても嬉しい。これで他のお客さんにお釣りとして渡すことが出来る。


「二段目のオレンジジュースが欲しい」


「よいしょ!!」


 女の子が背伸びしても二段目に届かない。するとお母さんが女の子を抱っこして、女の子はカチッとオレンジジュースのボタンを押した。


 オレンジジュースが下に出て行った。


「真由美ちゃん良かったね」


 お母さんが女の子をなでなでした。女の子は満足そうにジュースを取る。僕はとても嬉しかった。


 その後、僕の体に十円玉が取り込まれた。オレンジジュースの値段は百五十円。女の子は、十円玉を十五枚入れてくれた。とても助かった。僕は十円切れのランプを消した。ありがとう真由美ちゃん!!

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