慕容垂9 関東に臨む   

翟斌てきひんが配下を連れて慕容垂ぼようすいに面会。

皇帝についてはどうか、と勧める。

すると慕容垂は言う。


「国の正統は、あくまで慕容暐ぼよういよ。

 ならば奴こそが、我が主。


 諸君らと力を合わせ、

 関東の地を平定できたら、

 大燕だいえん復興の旗印のもと、

 しんには慕容暐の返還を求める。

 そうして皇位に復帰させるのだ。


 おれ自身が尊位につくつもりなど、ない」


それから、今後のことを協議する。


洛陽らくようは四方を敵に囲まれ、

 しかも北には黄河こうがが横たわる。

 旧前燕ぜんえんのエリアを取り返すには、

 どうにも身動きが取りづらい。


 ならば、やはりぎょうにまで北上、

 かの地を拠点として立ち回る方が、

 動きやすかろうと思う」


配下らは皆この提案に賛成。

かくて慕容垂は洛陽を離れ、

黄河を渡るため、王騰おうとう石門せきもんに派遣、

浮き橋を設置させた。




斌率眾會垂,勸稱尊號,垂曰:「新興侯,國之正統,孤之君也。若以諸君之力,得平關東,當以大義喻秦,奉迎反正。無上自尊,非孤心也。」謀於眾曰:「洛陽四面受敵,北阻大河,至於控馭燕、趙,非形勝之便,不如北取鄴都,據之而制天下。」眾咸以為然。乃引師而東,遣建威將軍王騰起浮橋于石門。


斌の眾を率い垂に會い、尊號を稱すべく勸むに、垂は曰く:「新興侯は國の正統にして孤の君なり。若し諸君の力を以て關東を平らぐを得たらば、當に大義を以て秦を喻し、反正を奉迎せん。無上の自尊は孤が心に非ざるなり」と。眾に謀りて曰く:「洛陽は四面を受敵し、北を大河に阻まれ、燕、趙を控馭せるに至りては形勝の便に非ざれば、北に鄴都を取り、之に據して天下を制すに如かず」と。眾は咸な以て然りと為す。乃ち師を引きて東し、建威將軍の王騰を遣りて浮橋を石門に起つ。


(晋書123-9_政事)




ここの慕容垂の言葉は、まぁ半分本当、半分ウソみたいな感じなのかなー、と思うのですよね。慕容暐を推戴する道筋はゼロではなかったように思うのです。


ただ、慕容泓ぼようおう慕容沖ぼようちゅうとの関係が、びっくりするほど見えてこない。なのでホントとウソの比率がどれほどのものか、全然わからない。


慕容沖による慕容恪ぼようかく系、慕容垂系虐殺のタイミングっていつくらいなんだろ。あれのタイミングがどこかで、見え方が違いそう。

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