姚邕   赫連勃勃を見る目

姚邕ようよう、字は子和しわ。小幼名は黃兒こうじ

姚興ようこうの弟であり、濟南公さいなんこうに封じられた。


姚興、りゅう姓を名乗っていたころの

赫連勃勃かくれんぼつぼつを安遠將軍とし、

高平こうへいを守る沒奕于ぼつえきう

サポートに任じようとする。


これを姚邕、強く諌める。

ありえませんよ! と。

すると姚興は聞く。


「そなたは勃勃の何を知るというのだ?」


「陛下を奉じんとする態度は傲慢、

 その統率は残虐そのもの!

 貪欲にして狡猾、不仁の極み!

 うかつに奴に官位を与え、

 寵愛でもしようものならば、

 すぐに家臣の分をも侵害し、

 任地を荒らし回りましょう!

 それが、恐ろしくてなりません!」


もちろん姚興は聞き入れず、

使持節、つまり地方総督レベルの

権限を与えた上で、二万の兵を与えた。

そこまでして朔方さくほうに駐屯させれば、

ご期待のとおり、反旗を翻す。


はふん、姚興は嘆く。


「弟の言葉を用いなかったせいで、

 このような事態を招いたのだな!」


姚邕はこのように鑑識眼に優れ、

また音樂にも通じていた。

耳にした音楽の抑揚を確認すると、

より美しく再編する。

人々は姚邕のアレンジを愛し、

『濟南公式ニューミュージック』

と呼んだ。




姚邕字子和,小字黃兒,興之弟也。封濟南公。弘始中,興拜劉勃勃為安遠將軍,使助沒奕于鎮高平。邕固諫以為不可,興曰:「卿何以知其為人?」邕曰:「勃勃奉上慢,御眾殘,貪猾不仁,輕為去就,寵之踰分,恐終為邊害。」興不聽,竟以勃勃為使持節安北將軍,配以雜卒二萬,鎮朔方。未幾,侵掠嶺北,興乃歎曰:「我不用黃兒之言,以至於此。」邕識鑒明慧,尢善音樂,皆能度其盈虛,增改曲調,世咸傳之,號『濟南新調』。


姚邕、字は子和、小字は黃兒、興の弟なり。濟南公に封ぜらる。弘始中、興の劉勃勃を拜し安遠將軍と為し、沒奕于が高平の鎮ぜるを助せしめんとす。邕は固く諫め以て不可と為さば,興は曰く:「卿は何ぞを以て其の為人を知らんか?」と。邕は曰く:「勃勃の上を奉ぜるに慢、眾を御せるに殘にして、貪猾不仁なれば、輕に去就を為し、之を寵ざば分を踰え、終には邊害為らんことを恐る」と。興は聽かず、竟に勃勃を以て使持節・安北將軍と為し、配せるに雜卒二萬を以てし、朔方に鎮ぜしむ。未だ幾ばくもなく嶺北を侵掠し、興は乃ち歎じて曰く:「我れ黃兒の言を用いざれば、以て此に至らんか」と。邕は識鑒明慧にして、尢も音樂に善く、皆な能く其の盈虛を度り、曲調を增改せば、世は咸な之を傳え、『濟南新調』と號す。


(十六国60-8_識鑒)




姚興の兄弟らは優れた人物として書かれまくりですのう……ほんまかいな。


晋書の言動プラス類書からの引用、が屠本十六国春秋の列伝パターンのようですね。しかしもう少しまとまった情報を読ませてもらいたいよなーとは思ってしまうのですよね。

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