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食事のお礼として渡したとして、はたして柳田が素直に受け取ってくれるだろうか。普段から高級レストランへ行き慣れている柳田に対して羊羮をお礼として渡すのはみすぼらしくないだろうか。そもそも羊羮なんて食べるだろうか。


そんなネガティブな考えばかりが浮かんで、一花は贈り物として渡すことをやめた。

会社に持っていき、休憩時間に向井も誘って皆で食べようと決意する。


これくらいなら、柳田も食べてくれるのではないかと考えた。


静かな執務室で一花は声をかける。


「社長甘いものお好きですか?」


「いや?あまり食べない。」


一花の問いかけに、柳田は一花の方を向くでもなく、自分のパソコンの画面に向かって答えた。


答えたのにその後の返事がなく、不思議に思って顔を上げると、ひどく仏頂面の一花と目が合った。


「……なんだ?」


「なんでもありませんっ!」


と、その口調は明らかに不機嫌だ。

一花の態度に意味がわからず、柳田は眉間にシワを寄せた。

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