デザートまでしっかり堪能し、一花は贅沢な気持ちで夜景を眺めていた。

強引に連れてこられたとはいえ、こんなにも素敵な夜景と豪華な食事ができるなんて滅多にないことだ。

「気に入ったみたいだな。」

「はい、とても綺麗でずっと見ていられますね。」

「じゃあまた連れてきてやるよ。」

「えっ？いや、それは……。」

「そろそろ行くか。」

「は、はい。」

事も無げに言われ、心なしか一花は動揺してしまう。

今日はたまたま。

強引に連れてこられただけ。

次はないんだから。

何度も自分に言い聞かせ、平静を装いながら柳田の後ろを追いかけるうちに、いつの間にかレストランから出ていることに気づいて慌てた。

「社長、お会計は？」

「先に済ませてある。」

「えっ？おいくらですか？」

「お前に払わせるほど野暮じゃねえよ。」

「いえ、いけません。一万円で足りますか？」

一花は財布から一万円札を出し柳田へ差し出すが、柳田は一向に受け取る気配がない。かといって一花も引き下がる気はない。

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