店員の後に続いて席に移動する間も一花の緊張は解けず、姿勢を正したまま真っ直ぐ前を見たままだ。エスコートする柳田にもその緊張が伝わるようで、苦笑いしながら耳元で囁く。

「なに緊張してるんだ。」

「き、緊張しますよ。こんな高級そうなお店初めてですし。」

半個室に案内され、柳田と向かい合って座る。

少し照明の落とされた空間は静かで落ち着いていて、大きなガラス窓からは夜景が広がっていた。街の明かりがキラキラと宝石のように輝いていて、一花は一瞬のうちに目を奪われた。

「うわぁ、すごい……！」

「来てよかっただろ？」

そう意地悪く笑われ、一花は不本意ながらも頷くしかない。強引に連れて来られただけなのだが、夜景を見て興奮してしまった自分が悔しい。

「そうやって、毎回女性を連れ込んでいたんですか？」

「はあ？」

「……という噂を耳にしました。」

「だったらどうする？」

「いえ、社長らしいなと思います。」

「どんなイメージだよ。」

一花の嫌味にも、柳田は楽しそうに笑った。

あまりにも自然に笑うので、一花もつられて微笑んでいた。

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