15
「……この上のレストラン知ってるか?」
「レストランがあるんですか?」
「54階なんだが、そこから見る夜景は絶景だ。」
「へぇ~54階……って、行かないですよ?」
一瞬興味を惹かれ54階からの景色を想像しかけたが、すぐに我に返り一花は拒否する。
「見てみたいだろ?騙されたと思って着いてこい。」
柳田は一花の返事を待たずして、手を取って強引にエレベーターホールへ引っ張って行く。
「ちょ、ちょっと、社長っ!離してください。」
手を繋がれた状態に動揺する一花は、必死に柳田に抵抗するが、柳田は何かを企むかのように意地悪な笑みを浮かべた。
「一緒に食事に行くって言うなら離してやるよ。行かないなら、そうだな、このままオフィスに戻るかな。」
そう言って繋いだ手を見せつけるかのように一花の目の前に掲げた。
「ぐっ……!」
「俺と食事するか、手を繋いだままオフィスに帰るか、さあどうする?あ~、向井のやつ、これ見たら何て言うかなぁ?」
楽しげな柳田とは対照的に、一花はどんどん顔が青ざめる。
柳田と手を繋いでいるところを向井に見られたら、向井は何と言うだろうか。向井の冷ややかな視線を思い出して一花は血の気が引いた。
いやそれよりも、他の社員に見られる方があらぬ噂を立てられそうで怖い。なにせ相手は社内で大人気の社長だからだ。
一花は青ざめた顔で柳田を見る。
柳田は自信満々な勝ち誇った顔をしていた。
「……食事に行きます。」
項垂れながら呟くと、柳田は満足そうに頷いた。
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