雪が降る頃には、あの子は

安路 海途

1(――ある日、冬の屋上で)

 見上げると、冬の青空が広がっている。それは濃い群青の、どこまでも続く色のついた世界だった。

「きれいな空だね――」

 と、わたしは自分でも知らないうちにつぶやいていた。まるで、雪の一片ひとひらが偶然手の上に落ちてきたみたいに。

 それに対して、意外にもみわちゃんからの返事があった。

「――ああ、きれいだな」

 彼女は首筋をまっすぐのばし、何か大切なものでも受けとろうとするみたいに空を見上げていた。


 それは世界が凍りついてしまいそうなくらいに寒い、冬の空に直接つながっているような屋上でのことだった――

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