「ヒーラーの方が安上がりだ！」と追放されたが私じゃないと患者さん死にますよ？ ～治せないから戻ってこいと言われても『ドクター』スキルでもあなたたちは手遅れです。あ、患者さんはこちらでお待ちください～

目覚めるキング・ベヒーモス

「な、なんだと！　国王陛下が当ギルドの監査に来ただと！」

　役員達は会議室で慌てていた。

「は、はい。どうやら宰相の都合が急遽、悪くなられたそうで」

　レイドールは報告する。

「く、くそっ！　聞いてないぞっ！」

「どうするのだっ！　我がギルド『ブラック・リベリオン』のには知られたくない事が沢山あるのだぞっ！」

「それに最大に見られたくないのは地下の研究室で開発している『キング・ベヒーモス』の存在だ！」

「あんな強力な生物兵器を見られたら、国家転覆罪の容疑で逮捕されるぞっ！」

「逮捕で済めばいい！　最悪極刑まであるぞっ！」

「もう、おしまいだあああああああああああああああああああああああああああ！」

　役員達は大慌てをしていた。

　◇

「ブラック・リベリオンの施設。その地下にこんな研究所があったのですか」

　私は感嘆と呟く。研究所では多くの研究員が働いていた。

「アルバートギルド長、どうされたのですか。そのお方は国王陛下！　なぜ国王陛下が！　宰相が監査に来る予定ではなかったのですかっ！」

　研究員は大慌てをしていた。

「う、うむ。色々あってなっ！」

「アルバート殿。なんだ、あれは？　あの禍々しい生物は」

　国王が指示した先には恐ろしい生き物がいた。見た目はベヒーモスのようだ。だがそれよりも一回り以上サイズが大きく、禍々しいオーラを放っている。恐らく遺伝的操作をされているのだろう。

「先生、怖いです」

　ユエルが寄り添ってくる。

「安心しなさい。何もしてきませんよ」

　私は彼女の肩に手を置いた。

「あ、あれはですね。そのっ！」

「あの禍々しいモンスターでブラック・リベリオンは何をするつもりだったのだっ！　言え！　言ってみろ！　アルバート殿！」

「それは……ですね。か、鑑賞です！　観賞用としてあのモンスターを培養していたのですっ！」

「鑑賞だと！？　ふざけるなっ！　そんな返答納得できるかっ！　我が国をあの生物で亡ぼすつもりだったのであろうっ！　恐ろしい計画だ！」

「亡ぼすなどともったいない事をするわけがありませんっ！　我々はあのモンスターをうまくコントロールし、王国を含めた世界の征服をっ！　あっ！」

　アルバートは口をふさぐ。

「王国だけではなく、世界を征服しようとしていたのかっ！　『ブラック・リベリオン』はっ！」

「く、くそっ！　もう誤魔化しきれないのかっ！」

「アルバート殿！　貴様を拘束させてもらう！」

「く、くそっ！　このまま捕まるくらいならっ！」

　アルバートは走り出した。そしてコントロールパネルの何かボタンを押す。

　ビー！　ビー！　ビー！　ビー！　ビー！　ビー！　ビー！　ビー！　ビー！

　警報音が鳴り響いた。

『キング・ベヒーモス！　起動状態になりました！　キング・ベヒーモス！　起動状態になりました！　周囲の方々！　大変危険です！　至急退避を！　至急退避を！　繰り返します！　至急退避を！』

　電子的な声が響き続ける。危険をアナウンスしていた。

「くっふっふっふっふ！　はっはっはっはっはっはっはっは！　もう俺は終わりだっ！　このブラック・リベリオンもっ！　だがなっ！　お前達も道ずれにしてやるっ！　この王国デュランダルもこのキング・ベヒーモスで亡ぼしてやる！」

「くっ！　血迷ったかっ！　アルバートっ！」

「くっふっふっふっふ！　はっはっはっはっはっはっはっは！　良い事を教えてやる！　国王！　このキング・ベヒーモスは魔術回路を植え付け、我々の命令を忠実に聞くようにする予定だった！　だが、今の状態ではコントロールできないっ！　つまりっ！」

　アルバートはにやりと笑った。

「もう誰もこのキング・ベヒーモスを止める事はできないという事だ！　くっふっふっふっふ！　はっはっはっはっはっはっはっは！」

　アルバートの壊れた哄笑が響く。やけくそになっているようだ。

「や、やばいぞっ！　キング・ベヒーモスが動き出した！」

「に、逃げろっ！　逃げろっ！」

　今まで閉じていたキング・ベヒーモスの目が開いた。怪しく目が光る。

　パリィ！　という巨大な培養試験管が割れる音がした。中から液体が零れ落ちる。

　グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！

　目覚めたキング・ベヒーモスが雄たけびをあげた。

「なんと恐ろしい！　禍々しい化け物じゃっ！」

「国王陛下！　逃げましょう！　ここは危険です」

　私はそう提案した。流石の私もあの禍々しい化け物相手には恐怖を覚えた。心臓の鼓動が高まっている。冷や汗をかいていた。

　それは他の者も一緒だった。ユエルもヴァイスもエミリアも。皆あの化け物に少なくない恐怖を抱いている様子だ。

「お父様、シオン様の言う通りです。逃げましょう。ここにいては危険です」

「う、うむ。そうだの。逃げるとするか。とにかく地上へ向かわねばな」

「行きましょう。皆さん、地上へ」

「「「はい！」」」

　私達は地上へ向かった。

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！

化け物のような咆哮が響き渡る。

キングベヒーモスは巨大な地下施設を破壊して回る。そして、もの凄い騒音や爆発音が響き渡っていた。