竜人の看護師たち
「うわああああああああああああああああああ! すごい綺麗です!」
建物に着いた時、ユエルが感激の声を漏らす。
「ユエルさん、喜びすぎですよ。でも本当は私も嬉しくてはしゃぎまわりたい気持ちもあります」
私は大人ですから。そんな真似はしません。ですが内心は嬉しいのです。自分が院長として務められる病院を手に入れたのですから。
「先生! 早速中に入ってみましょうよ!」
「落ち着いてくださいよ。ユエルさん。建物は逃げないのですから」
私達は新築の病院に入る。
◇
「うわああああああああああああああああ! すっごい! すっごい綺麗ですーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
ユエルは興奮していた。
「確かに凄い綺麗ですね。シオン先生」
ヴァイスは笑みを浮かべる。外装も綺麗だったが、内装もその期待を裏切らない、清潔感のある立派なものであった。
白い壁。綺麗な廊下。そして個室には入院用のベッドまできっちりと揃っている。
「これなら沢山の患者様を入れる事ができそうです」
とはいえ、神の手(ゴッドハンド)による治療回数は限られている。私のキャパシティには明確な限界が存在した。
だが、全員が全員に神の手(ゴッドハンド)を使用しなければならないという事もない。治療薬を飲み、安静にしていれば治る病もある。危険は危険な病ではあるが、死肺炎のように即死するわけではなく、ゆっくりと進行していく病もある。
そういう患者は何もすぐに治さなければというわけでもない。ベッドで横になってもらい、順番を待ってもらえばいいのだ。
ミシェルも言っていたが、私は少々無理をし過ぎるきらいがあった。今後気を付けなければならない。休息も仕事のうちなのである。
「それでは、当院の新任看護師(ナース)達。制服(ユニフォーム)のチェックをしましょうか?」
「制服(ユニフォーム)ですか?」
「ええ。看護師(ナース)には看護師(ナース)の制服(ユニフォーム)があるのです」
私は彼女達に看護師(ナース)服を渡した。
◇
「どうですか? シオン先生」
ナース服を着たヴァイスはそれはもう美しかった。金髪で色白の肌をした絶世の美少女であるヴァイスだ。純白のナース服を着れば当然のように映えた。彼女の清廉なイメージが尚の事強化されている。
「ええ。よく似合っていますよ。ヴァイスさん」
「ありがとうございます。シオン先生。これからシオン先生のお役に立てるかと思うと私、すごくうれしいのです。先生のお役に立てるように精一杯務めさせて頂ければと思います」
「ええ。期待していますよ。ヴァイスさん」
「はい」
ヴァイスは何人たりとも絆すような暖かい笑みを浮かべた。その笑みは太陽のようである。
「ぶーーーーーーーーーーーーーーーーー! ぶーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「なんですか? ユエルさん。むくれて。どこか調子が悪いんですか?」
「別に調子は悪くありません。シオン先生はかっこいいですし、スーパードクターですし、優しいですし。頼もしいですし。これからも可愛い女の子がどんどん入ってくると思うとわたしの地位が危うくなるのではないかと危惧しているんです」
「別に危惧する事はありません。ユエルさん。あなたの力は当院に必要なものです。あなたの笑顔で患者様の心を照らしてあげてください。それがあなたの務めです。私もあなたの力を必要としているのですよ」
「本当ですか!? だったら嬉しいです!!」
「はい。先生のお役に立てるように頑張ります!」
「フレイムどうなのだ? 似合っているのだ?」
「似合ってるぜ! ティータ!」
「そうなのだ! よかったのだ!」
その他の竜人達もナース服に着替えたようだ。
「竜人の皆様。あなた達は特に非常時の患者様の運搬をお願いします。その他は例えば私の出張などを手伝って欲しいのです」
「「「「「はい」」」」」
「いわば乗り物なのだ」
「仕方がないのです。天空を私達以上に素早く飛べる生き物はそう多くはないのです」
「とはいえ、一般家庭が当院にどう連絡を取ってくればいいんでしょうかね?」
何か異常事態が発生しても連絡が取れなければ意味がないのである。
「それに関しては心配ありません」
「そうなのですか? ユエルさん」
「はい。一般家庭には通信用の魔晶石を配っておくそうです。それで連絡を取れそうそうです」
「そうですか。それはよかったです。では、早速ではありますが、当病院をオープンさせますか」
「「「「「「はい」」」」」」
「行きますよ。皆さん、とびっきりの笑顔で患者様をお出迎えしましょう」
こうして獣人の国に私の病院が開かれたのである。
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