獣人の国に立派な病院が建つ


それからの事であった。私は竜死病患者の治療を行った。


「はい。これで大丈夫ですよ」


「ありがとうございます! 先生!」


 竜人の女性は笑顔で感謝をしてくる。


「ふう。これで粗方終わりですか? ユエルさん?」


「はい! 先生! お疲れ様でした!」


「ありがとうございます。シオン先生。シオン先生のおかげで竜人国の危機は救われました」


「いえ。ドクターとして当然の事をしたまでです」


「それでも先生が母をそしてわたしを、そして竜人国を救ってくれた事に何の代わりもありませぬ。不束者ではありますが、一生をかけて御恩をかえせていけばと思います」


 うるんだ瞳でヴァイスが寄り添ってくる。


「こほん」


 ユエルが咳払いをする。


「先生、竜王バハムート様がお呼びですよ」


「ええ。向かいましょうか」


 こうして竜人国の問題を粗方解決したのである。


 ◇


 竜城で私達はまともになった竜王バハムートと面会する。


「ご苦労であったな。ドクター、シオン殿」


「いえ。ドクターとして当然の事をしたまでです」


「余の事まで面倒をかけたな。そしてヴァイスを助けて頂いた恩は生涯忘れぬ。褒美は何が欲しい? 何でもよいぞ。与えてやろう」


 バハムートは笑みを浮かべる。


「そうですね。竜人を幾人か貸してください。そして獣人国で働かせて欲しいのです」


「よかろう。ヴァイス」


「はい。お母様」


「四姉妹を引き連れて獣人国に付いていくがよい」


「ありがとうございます。お母様! よろしくお願いします、シオン先生」


 ヴァイスは笑顔を浮かべた。


「こちらこそよろしくお願いします。ヴァイスさん。あなた達、竜人の力で多くの患者の命を助ける事ができると考えています。その為に是非、お力を貸してください」


「はい。シオン先生。どうかわたし達をよろしくお願いします」


 こうして竜人国の窮地を救った見返りとして五人の竜人が獣人国で働く事になった。


 ◇


 私達は白竜となったヴァイスの背に乗り、獣人国へと帰っていく。


「見てください! シオン先生! しばらく帰らないうちに立派な建物が!」


「あれが私の病院ですか?」


 眼下には白くて綺麗な建物が建っていた。それも想像よりもずっと大きい。ミシェルが私を招き入れる時にはからってくれた私用の病院であろう。


「はい! きっと病気の治った大工さん達が頑張ってくれたに違いありません!」


「ええ。そうですね」


 私達は王城へと降り立っていく。そしてミシェルと面会する事にした。



「王妃様。無事竜人国の病を治療して参りました」


「ご苦労でした。シオン様。風の噂で聞いております。何でも今回も大活躍でしたらしいですね」


「そんなことはありません……大した事では」


「謙遜はよいです。あまりやりすぎると卑屈になりかねませんよ」


「ええ。気を付けます。それはそうと、王妃様。天空より見えましたがついに完成したのですか?」


「ええ。以前より建築を進めていたシオン先生の病院です。その病院で多くの患者様を治療する事ができるはずです」


「ありがたい限りです。王妃様。この御恩、必ず返させて貰います」


「期待していますよ。シオン先生」


「はい! ついましてはこちらが当院で働かせてもらう事になっている竜人達です。ヴァイス姫、王妃様にご挨拶を」


「はい。獣人の王妃ミシェル様。竜人国の姫であるヴァイスであります。皆様のお役に立てるように他の竜人ともども死力を尽くさせて貰えればと考えています」


「死力を尽くすって随分大げさね。まるで戦争に行くみたい。普通に頑張ってくれればいいのよ。頑張りすぎはだめよ。シオン先生みたいに倒れる事になるわ」


「シオン先生が倒れられたんですか?」


「無理のしすぎでね。それで慰安旅行に出かけたの。そこでヴァイス姫と出会ったのよ」


「そうだったのですか。そんな事が。確かに無理は禁物ですね。肝に銘じます」


「わかればいいのよ。それでシオン先生、よろしかったらこれからミシェルとそれから竜人の方々と完成した病院に行かれたらどうですか? もう完成していて、使用しても構わないそうですよ」


「はい! では早速向かわせて頂きます!」


 自分の病院。それはドクターにとっては自分の城ができたようなものだ。必然私の足取りは軽かった。

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