エッグタルトの魔女

ぶいさん

マン

 こんにちわ!おいらはデッシ、エッグタルトの魔女ルトさまのお世話をしているハウスエルフっス。ここはお師匠さまの住処もとい実験場の森で辺境の森と呼ばれているっス。一番近い民家まで30kmはあるクソ辺境っス!そのくらいで辺境とか甘えるなとかいう小言は間に合ってるっス!やめてください辺境マウントは!


 かつてこの地に存在した偉大な魔女バアトさま!の孫娘であるルトさまは、偉大なおばあさまの名前をけちょんけちょんに貶めるほどの怠惰と強欲とひらめきと飽きっぽさの塊で、サキュバスに見間違うほどの痴女ですが、一応おいらのお師匠さまっス。

 おいらたちハウスエルフは魔女族より寿命が長くて基本的には家に仕える種族っスから、おいらもバアトさまの頃から仕えているっス。正直バアトさまによろしくされてなかったら今のお師匠さまことルトさまに使えることはなかったかもしれないっス。

 かつて魔王からも恐れられたと噂の偉大なバアトさまも、寄る年波には勝てず800歳を目前にした799歳の誕生日に大好きな牡蠣とフグをたらふく食べて食あたりで亡くなられたっス。とっても悲しかったっス。葬儀には魔女連盟の魔女たちや各国の首脳たちなんかも来て、連日連夜飲めや歌えの一種のフェスティバル状態だったっス…懐かしいっス。

 まあそんな思い出も今は昔っス。バアトさまのお名前や威光は今もこの地に昔話としてご健在っスが、そんな思い出をぶち壊しているのが今のお師匠さまことエッグタルトの魔女ルトさまっス。

 なんでエッグタルトの魔女って呼ばれてるかって言うとっスね…たぶんルトさまが真っ黄色の髪をしてるからっスね。特に深い意味はないっス。だいたい通り名とか呼び名なんてものは安直なものっス。



「デッシー!なんか最近マンドラゴラ栽培が流行ってるんだって!うちも今日からマンドラゴラ栽培してバッシバッシ売ってウハウハすることにしたから、あんたも手伝ってよね!」


 感慨に耽っていたおいらの前にいつのまにかお師匠さまがいたっス。なんっスか?そのズタボロの麻袋…小刻みに動いてるっス…。

 しかしお師匠さま相変わらず痴女っスねえ。魔女といったらこの形!という魔女帽はバアトさまから譲られた由緒正しき魔女帽ですが、それ以外はどう控えめに見ても痴女っス。おいらもお師匠さまのことを別に貶したいわけではないんス。ただ事実なんス。小麦色のサラサラの髪とできれば言いたいんス、でも言えないっス。お師匠さまの髪は原色バチバチの黄色で目に刺さる色をしてるっス。

 豊満なおっぱいはほとんどあらわになってて服とはなんなのかイチから考え直してレベルっス。それになんスか、そのビリビリに破けたタイツと太もも丸見えのミニスカは…パンツ見えるっス!って…


「は?!?いやいやいやお師匠さま!マンドラゴラ栽培は肥沃な大地と丹精込めたお世話が必要な繊細な作業っス!ただ育てたらいいわけじゃないっス!!!販売するにも魔女連盟と国王軍管理局の許可が必要っスから、謎のパワーで奇跡が起きて今日育てられたとしても明日売るわけにもいかないっス!」


「大丈夫!昨夜、管理局の偉いっぽい人間拉致してきて、ガッツリ脅しといたから!許可は取れてる!てきとーにやってもなんとかなるっしょ!」


「ファッ!?!ももももしかしてその麻袋は…いやいやいや何も見なかったっス。デッシは何も見てないっス。」


「ってわけだから、沼の森の魔女んとこから苗もらってきたわ!!!じゃあこれ畑に持って行って~デッシ~!!!」


 そう言ってぐいぐい押し付けられた植木鉢にはまだ株分けされたばかりのマンドラゴラの赤ちゃんがいたのでしたっス。

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