第13話 嫌いな奴の方が印象に残りやすい

午後4時 

音斬 小夜子の寝床は、黒城 闇と戦った西京橋の下であった。そこにテントを立てている。

そして、そこに、たまたま落ちてあったルアーを付けて、川に向かってビュッと投げ出す。

彼女の自由時間の始まりである、まず、自作の釣竿で魚が来るのを待ち、その間に木の塊を拾って火を起こす。そしてだいたい火をおこしたところで魚が釣竿にかかる。彼女はそれをなんなく釣り上げて、そこら辺にある、木の棒を自身の能力で出した水で洗いそれで、魚をさして火にさらす。そして、大体焼きあがった所で彼女が食べ、それで朝食は終わる。

その時に時々、先日助けた、野良犬や野良猫がやってくる。「・・・おいで」その子たちと一緒に食べることもある。そして30分間仮眠、そして7時頃に登校する。それが彼女の一日のはじまりである。

午後もいつもと同じく釣竿を取り出す所から始まる。

しかし、この日の午後は午前のようにスムーズにはいかなかった。

彼女は、橋の下に着くと早速、そこら辺にあった木の棒で作った釣竿を取り出した、がそこで気配にきづいた。

「そこに、いるのは、誰ですか?」

小夜子は、下校途中から何者かが自分をみている気配に気付いていたのである。

「あらぁ、意外と気付くのが早かったじゃない、NO3、別名ナイトメアウォーター、いいえ、今はこう呼ぶべきかしら? 音斬 小夜子さん。」

「やはり、あなたでしたか、NO1、ブラッドスピア」

小夜子が振り向くと、そこには、緑色の帽子を被った白髪の女が立っていた。自分があの実験で最後に刃を交えた相手だった。

「なぁに? あなたのまだそんな格好しているの?」

「あなたの清掃員みたいな服装よりは、全然良いと思いますが。変装でもしているつもりですか? それ」

「相変わらず、減らず口が多いのね」と、白髪の女は少し、口元を歪め、目に皺を寄せながら言った。

「何しにきたんですか?」

「ずいぶんと仲よさそうにしてたじゃない、黒腕の彼女と」

すると、そこで小夜子は訝し気に目を細めながら、「ああ、見ていたんですか」と言い、「別に「仲良くしているつもりなんてありませんよ」と拒否する。

「そうかしら? 彼女と話しているときの姿、まるで、あの子たちといたような顔をしていたわよ?」

そこで、小夜子が白髪の女を睨みつけて言った。

「どうやら、すこし会わない内にあなたはずいぶん頭がわるくなったようですね」

「はぁ?」

「私は、あなたに何しに来たんですかと尋ねたのですが、あなたは見当はずれな昔話をしましたね。どうやら言葉のキャッチボールもできなくなりましたか」

「あら、聞かれたことに対して、ちょっとしたイレギュラーな話題を入れるのも会話の醍醐味なのよ?」

「いいから、さっさと用件を言ってください。まぁ、なんとなく分かりますけど」

もう小夜子は言葉を言い終わるか終わらないうちに、刀を抜き出し、白髪の女にゆっくりと近づいていった。

そして、白髪の女もゆっくりと、小夜子に近づいた。

「フフフ、まぁそうね、あの時の決着をつけるために私は、あなたに会いにきたの。まあ、ついでに、あの黒腕を奪いにきた」

白髪の女がそう言った瞬間、小夜子の顔は険しくなった。

「それは、誰かの命令ですか?」

「そんなわけないでしょ。いったでしょう? あなたとの決着をつけると。ついでに、あの黒腕の女も殺してしまいましょうか?」

すると、小夜子は眉間に皺をよせて、明らかに憎悪を表す表情を浮かべた。

「ついでに? ふざけないでください。そんな買い物ついでにお菓子買うような感覚でいる時点で貴方は負けてる。ひか……いえ、彼女が死ぬのは私の刀に心臓を抉られた時。その邪魔をするのであれば、あなたも斬る。彼女は渡さない」

「そう、やっと良い顔になってきたじゃない、ところで……」

と白髪の女は言葉をとぎらせると共に、右腕から真っ黒な槍を出し、風を切るスピードで小夜子に一気に近づいてきた。小夜子は、持っていた刀の切っ先を向けた。そして、二つの武器が重なり合い火花が散る。その時、刀を黒い槍の中心からわずかに外れたところを小夜子は当てていた。そこからまるで削っていくように白髪の女にむけて刃が走る。

「甘いわね」そういうと白髪の女は、槍を横にして、小夜子の刃を払いのけた。そして、再び彼女の首元に槍を向ける。

「っく」彼女は、すぐにのけ反り躱し、その拍子に地面と平行線に刀を抜いた。

(その距離から刀を?)しかし、彼女の刀は、水を帯びていた、すぐにその水は白髪の女の足を軽く切り捨てるくらいの長さの刃に変わった。二ノ型『鮟鱇』。

小夜子は、彼女の足を狙い斬り付ける。が、「甘いわね」彼女は、後方飛びをし、一気に小夜子と距離をとった。外したか。

「相変わらず、槍の相手は難しい。」

「そっちこそ、剣のあいてなんて何度したってなれないわ。だから・・」

そういった瞬間、白髪の女の姿が消えた。

「なっ、これは」たしか、彼女の能力『詰め込まれた猫箱』(ラフラフラストレーション)。物質あるいは、物体と自分の体、もしくは何かを一体化させる能力。

いったい、どこから現れる。いったい、どこから。

しばらく、辺りは静寂に包まれた。

そして、突然、小夜子の左斜め後ろから槍が飛び出してくる。

ガキンッ!! 再び、槍と刀の斬撃の華が咲く。

「まぁ、やっぱりみやぶられちゃうわけね」

「まぁ、相手の死角から攻撃するのは当然のことですから」

「そう」そう言って再びもぐりこもうとすると「させない」と先ほど地面を切りつけた時の水を弾丸のように、白髪の女に向けて、放つ。

(これは、もぐる暇がないわね)白髪の女は能力を解除し、水の弾丸を上から槍で潰した。

そして、槍を軸にして、小夜子のキックをする。

「っく」小夜子はとっさに体を後ろにそり、そのまま回転して起き上がった。

「全く本当にやっかいな相手」白髪の女は顔についた土をどけながら言った。

「そちらこそ、相変わらず、やりにくい」小夜子は地面に膝をつけながら言った。

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