第六話 昔に……


「相馬くん今日一日中、ぼーってしてたけど何かあった?」


 心配そうな顔で覗いてくる。他の女子とかと喋れば良いのにと思いつつ返事をした。


「あーうん。あったと言えばあったし、ないと言えば全然ない感じの事があったかな」


 罰ゲームが終わってからのことで考えてたことが俺の横にいるなんて言えない。


「もしかして罰ゲーム? 酷い事とかされたの?」

「楓は優しいよなぁ。好きになりそう……あっ」


 思わず口を滑らしてしまった。


「えっ?」

「いや、まあ、入学してそんなに経ってないしさ? そう思うはずないだろ? まあ、寮とか行き道帰り道と一緒には帰ってるけれど、それはそれでそんな感情なんて…」


 気持ちが気づかれないようにと喋るがかなり焦り余計に怪しくなってしまった。


「もしかして昔会ったことある? その慌て方の感じだとか名前とか」


 昔。昔とはいつ頃の昔だろうか。女の子と喋った時なんて小学生の頃、喋ろうとして失敗した事しかなかったけどその時の事だろうか。

 1人で読書をして誰とも関わろうとしない女の子がいた。地味で地味で根暗っぽい感じで眼鏡をを掛けて大人しい感じだった。


『あの、それ何読んでるの…?』

『………』

『ねぇ、ねぇ』

『………』

『せっかく、仲良くしてあげようと思ったのに』


 この頃の俺は、クソガキで人付き合いも特に長けている訳でもない。ぼっちだったのもそれが原因だった。人と仲良くするなら誰とも喋ってない人だったら、仲良くなれるかもしれないと勘違いをしていたのだろう。


 その時少女は、今までの雰囲気が豹変した。


『うるさいわね!1人で居たいからこうしているんでしょ!邪魔だから違う所行って!』

『えっ、だって1人じゃつまらないじゃん。だから喋ろうとしただけで…』

『うるさい! うるさいうるさい! 黙って! だっ……だ……まっ……て……』


 女の子は泣き出した。それは何かを我慢してたようで全部溢れたように思えた。でもその頃は何も分からずに。でも俺が悪かったのは確かだった。


『まあ、泣くほどでもないじゃん?俺はただ喋ろうとしただけで。泣かそうなんて思ってもなかった。』

『うぅっ……ぐずっ……んっ……っ……ううっ』


 それから俺は担任に呼び出され、それからは全く覚えていない。

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