大切な扉

今晩葉ミチル

大切な扉

 その扉は、絶対に開けてはならないと言われている。

 父からの教えだ。

 幼かった私は素直に従った。

 しかし、いつしか疑問を持つようになる。

 父は何を隠しているのだろう?

 一度知りたくなると、扉の事が頭から離れられなくなった。



「気になるな~」

 私は扉をじっと観察する。

 古い木でできた扉だ。蝶番が付いているが、鍵穴もダイヤルもない。

「どうやって開けるのかな。蹴れば壊れるかな」

 少し距離を置く。

 呼吸を整えて集中し、一気に走る。

 勢いそのまま、蹴る!

 しかし、扉はビクともしなかった。

 勢いつけて走った分だけ、全身に鈍痛が走った。

「ううううう」

 痛みのあまりのたうち回る。

 こんなに頑丈な扉に隠すなんて、きっと大切なものに違いない。

 知りたい。父が何を隠しているのか知りたい。

 私は好奇心の赴くままに、扉を叩いたり、押したりした。

「うーん……取っ手がないから引くこともできないしなぁ……」

 いろいろやるうちに疲れてしまった。

 ベッドに寝転がって考える。

 しかし、いい案が浮かばずにうとうとしてしまい、そのまま眠ってしまった。

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