第17話◆◆⑯ガンゾウと成長する剣◆◆
『剣』は鉱物だ。
いや、その素材として鉱物、つまり『鉄』に類する物を精製し、火を入れ、叩き固め、また焼き、研いで刃を出し完成させる。
つまり、『鉄』である限り『伸びる』などと言うことは無いのであるが、『こいつ』は伸びている。
最初に手にしたときは赤黒く錆びた小刀でしかなかった。
暇に任せて研ぎあげたときは、どんなに研いでも髭すら剃れないナマクラだったが、『魔滅の石』を入れたらちゃんと『刃物』として『斬れる』ようになった。
とは言っても、斬れるのは『魔物と神種』だけらしいがな。
そして今、その『ナマクラ』だった小刀が、『小太刀』程に伸びている。
不思議なことに、『鞘』もそれにあわせて変化しているのだな。
そして今、気付いたのだが、この『魔滅の剣』は、切先からおよそ30cmほど離れていても魔物を傷付けられる能力が有るらしい。
刀身が届かなくても、その程度の距離なら見事に切り裂いているのだな。
こいつ・・・そのうち喋り出すのじゃないのか?
なんて考えるのに0.0000002秒。
いや、計ってないからわからんな。
「ガンゾウ!このフロアはだいたいやっつけたね!ウラジミール!」
「はい!姫様!」
ああ、ウラジミール、その下僕根性はなかなかのものだな。
根っからの召し使いだったようだな。
「ウラジミール!この塔は何層有るの⁉」
「はい!姫様!この塔は全部で地上七層、地下三層でございます!」
ウラジミール、俺の時はくだらない私見を挟むが、クリスタには明快に答えるな?
ちょっとムカついたので丸出しのケツを蹴り飛ばしてやった。
軽く蹴ったつもりだったが、ウラジミールは壁際まで転がった。
「ご、ご主人様!な、何を?」
「ああ、気にするな・・・何となくだ・・・」
壁に激突した勢いで、顔の右半分を潰されながらウラジミールは恨み言をブツブツ言っていたが、気にすることもない。
「で?上か?下か?」
「そうでございますねぇ、強い呪力を上から感じるのは事実ですが、下からがよろしいかと・・・」
また何か回りくどいことを言い出しそうだな・・・
「何故だ?」
「上に力を感じるのは、たぶんペドロが居るからかも知れません。でも・・・」
「でも?」
イライラしてきたぞ。
「下には次元の歪み的な物を感じます。これは・・・」
俺は空間呪から葉巻を取り出し火を着けた。
甘い香りが漂うが、イライラは収まらない。
「これは?」
「はい、今回の魔物どもが沸いて出た原因が、その歪みではないかと推察する次第でございます。」
何とか拳骨を振るわなくて済んだ。
「そうか。だがな、その歪みはどうやって無くすんだ?」
「分かりません。」
ぷちっ!
ドギャッ!と、ウラジミールが蹴り飛ばされた。
誰に?
俺にだな。
「ならばペドロをぶっ飛ばして聞くとしよう。」
そう言い捨てて、壁際で手足があらぬ方向に曲がりくねったウラジミールを残して階段を上がり始めた。
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