第9話
「…………上着を、忘れてきた」
陽気の中で、今や昔のことのような、公園へ行った。
子どものはしゃぎ声が、それを見守る母らのお喋りが浄化の炎をちらちら燃やす昼から、昏々とした夕にかわるまでに帰ってきたのは良かった。
問題は、昼寝の間背に引いていた上着を忘れてきたことである。
ライオネルが夜に外出すると若干態度が乱雑になるような隣人は、もう寝ているはずだ。
(さっさと取りに行ってくれば良いか)
鈍く銀に輝く戸に、手をかけた。
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