現代で暮らす僕の元に、悪役令嬢モノで疲れた(元)騎士さんがやってくる話。

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第1話


───誰だっていい。助けてさえくれるなら。

手を、貸してくれ。自分で立ち上がるには

もう、疲れすぎた。




あの令嬢さえいなければ、こんなことにはならなかったのだ。


ジャクリーンだったかアイリスだったか、それともローゼンだったか、名前はいまや思い出せないが、凡庸な生まれに壮大なまでの魔力を持った下級貴族の令嬢だ。


彼女は俺の主だった時期女王を押しのけて学園の男たちの"姫"となり、主から俺を引き離そうとした。


許せなかった。


主は何も悪くなかったはずだ。研鑽し、バカタレの伴侶のために女王としての風格を一時も崩さず生きてきた。


それが、どうだ。


あの女に誑かされた人間たちは皆、主を悪役として扱った。忠言を悪口と捉え、助けを虐めに変換した。


主は、傷つき、疲れていた。俺もそうだったが、主の心労を鑑みればそれほどのものでもなかっただろう。


俺は、だから、反旗を翻したのだ、あの女に。


主を自殺に追い込んだあの女相手に、どうせ勝ち目のない争いだったとしても、最後にひとつでも傷をつけられればと。


それは簡単に抑えられ、俺は、主の声も遠くなった、退廃してゆく学園の隅で俯いている。




自分がそうであるはずなのに、騎士という偶像に、救いという虚妄に縋る想いは、蚊の啼くようでいて確かに声になっていたはずだ。


しかし、それを誰かが聞くことはなかった。

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