とあるサラリーマンの一日

JN-ORB

煙草


 冬が終わり、春になり、コートを出すか出さないかで少し悩むような心地よい気温の季節。夜も半ばに差し掛かり、飲みたりない気持ちと若干の睡魔に襲われ、次はどこに足を向けようかと悩む。



ガコンッ



 繁華街から少し外れたところにある自販機の横で、酔いを覚まそうと缶コーヒーを飲みながら煙草を吹かしていると、私の目の前で誰かが立ち止まった。顔と視線だけを向けると、20代半ばぐらいの派手な化粧をした華美な格好の女性が私の方を見ている。


「お兄さん、ここはタバコだめだよ。」


 注意してくれたその子に謝罪しつつ、紫煙を灰色の雲が覆う空に向けて吐き出し、携帯灰皿にまだ半分も吸っていない煙草をねじ込んだ。


 ……世知辛い世の中になったもんだ。

 缶コーヒーを一気に傾け、自販機横のゴミ箱に空き缶をねじ込む。


 明日は休みだ、もう少しだけ酒を入れてもいいだろう。

 誰にでもなく言い訳をしながら繁華街に足を向けた。

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