アイドル×プロデューサー~刀子と鞘香の場合~

永久保セツナ

第1話 新星アイドル・結城凛々

「勇気りんりん! ファンの皆さんに勇気を与える存在になりたい! 結城ゆうき凛々りんりんです! よろしくお願いします!」

 ――とあるライブ会場。

 『スターライトガールズ』というアイドルグループの新人アイドル紹介で、結城凛々は元気よくそんな挨拶をした。

 ステージ脇の観客から見えない場所から、『スターライトガールズ』のプロデューサー、太刀川たちかわ鞘香さやかはそれを満足そうに見ていた。

 『スターライトガールズ』は大人数の少女たちで構成された、いわゆる『量産型アイドル』などと揶揄されるものである。

 だが鞘香はそうは思わない。『量産型』なんて言われたって、彼女たちはクローンではなく、容姿も性格もひとりひとり全くの別人であることに変わりはない。そして単純に人数が多い分、誰かひとりはファンの心に刺さるわけだ。実際、スターライトガールズのアイドルたちはそれぞれのメンバーが多くのファンを抱えていた。

 そして、今日新しく加入した結城凛々も、きっと人気者になることだろう。今も男性の観客が「凛々ちゃーん!」と野太い声で叫んでいるのがステージ裏まで聞こえてくる。

 今日のライブデビューのために、歌も踊りもしっかり叩き込んできた。彼女は要領がいいのか、何でもそつなくこなせる優秀なアイドルだった。

「これからが楽しみね……」

 鞘香は微笑みながら呟いていた。

 ――これは、新人アイドル・結城凛々と、敏腕プロデューサー・太刀川鞘香の、波乱万丈な恋物語である。

 

〈続く〉

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