第3話:白金獣魔師は自力で習得する
尋常じゃない力が漲っていき、突然の全能感に襲われた。
魔法をぶっ放せば山が一つ消し飛びそうだし、地を蹴れば何百メートルもジャンプできるんじゃないか——そう思わせるほどだった。
「ご主人様と私の力が共有したのです。その辺の人類などどうということはありません。もし私以外の魔獣をテイムしようとも契約が絶えることはないのでご心配はせず」
「ま、まじか……」
しかしある意味予想通りというべきか、レッドの持つ魔力、スキル、身体能力は凄まじいものなのだと実感する。
それを無条件でテイムできて、俺の力にできるって……チートすぎないか?
そうか、そういう意味でLRということか……。
しかし、『テイム』っていうことはレッドを常に連れ回すことになるんだろう。……となると、このままでは大きすぎてちょっと不都合もありそうだな。
小さく……できる気がする。
これはレッドと共有が成立したからというわけではなく、多分『テイム』とセットで俺が習得したもの。テイムした魔物を能力変わらず小さくできる魔法。
「『小型化』——!」
レッドの身体が淡い光に包まれ、影が小さくなっていく。
そして、
「おおー、さすがだよご主人様! もう完璧にスキルを使いこなしてる!」
「よくわからないけど、多分これで良さそうだな。まだ名乗ってなくて悪かった、俺は今井悠人——ユートとでも呼んでくれればいい」
「分かったー、ユートこれからどうする?」
小型化すると随分と雰囲気も変わるんだなぁ。
……と、そんなことよりも確かにそうなんだよな。
これからまずどうするかプランを立てないと。
「女神は魔王がどうのと言ってたけど、それは置いておいてまずは現地人と会いたい。情報を集めて、そこから今後の方針を立てたい。……ということで、ひとまずは村か街か、とにかく人がいる場所を目指したい」
「分かったー、それならボク、近くの村の場所知ってるから案内するよー!」
「本当か!? それは助かるよ。頼む」
「分かったー、じゃあこっちついてきてー。あ!」
「どうした?」
「小型化を解除してくれたら村までユートを乗せて飛んでいけるけど、どうするー?」
「うーん、それは助かるんだが……遠いのか?」
「ここからだとそんなでもないよー」
「なら、歩いて行こうと思う。村の人がドラゴンを見たら驚くだろうしな」
「それはそうだねー。分かった、じゃあこっちー」
レッドに案内されるがまま後ろをついていったのだが——
「キキキキキィィィィ」
「くそ、魔物か!」
木の陰からウサギ型の魔物が飛び出してきた。
手に入れた動体視力と身体能力で吹き飛ばしてしまえばいいのだが、もう一つ試したいことがあった。
レッドの能力の一つが、俺にも使えそうな気がしたからだ。
「『ブレス』……いけるか——?」
テイムを使った時と同じような全身に冷えた血液が循環するような感覚——なるほど、これが魔力で、魔法を使うとはこういうことなのか。
用語が正しいのかわからないが、現代人である俺にとってはそんな風に捉えると理解しやすかった。
気づけば、顔面に飛んでくる魔物。
その瞬間、俺は口から真っ赤な炎を吐き出した。
超至近距離からの高火力ブレス。
凄まじい威力が魔物を襲い、消炭すら残らず一撃で葬り去ることができた——
「なるほど、これが魔法……ブレス……」
なんとなく、感覚が掴めてきた。
これなら、あれもいけそうだな。
目を閉じて、ついさっきの『テイム』と『ブレス』を使った時の魔力の流れを解析した。
両者の違いを確認し、膨大な情報量から法則を理解していく。
そして、法則を参考に別の結果を導き出す——!
「これだ! ファイヤーボールとでも名付けようか」
俺は右手からブレスと同等の火力を有する魔力弾を発生させ、チョロチョロと動いていた魔物に向けて放った。
ドオオォォォン!
と爆散する。
魔物の姿は完全に消えており、やはり俺の狙い通りだった。
ここから分かることとしては、テイムで手に入れた魔法のスキルをさらに改良して昇華させることもできるということだ。
まだまだレッドから受け継いだ魔法はたくさんあるし、これから違う魔獣もテイムすれば可能性は無限大に広がっていく。
「ユートすごいよー! ボクが何千年もかけて洗練した魔法を容易く使いこなすばかりか改良しちゃうなんて!」
「ははっ、ありがと」
単純な戦闘力だけじゃなく、初めから良い仲間もできた。……ドラゴンだけど。
高校デビューには大失敗した俺だけど、異世界デビューにはひとまず成功したと言って良さそうだ。
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