第77話年寄りじみた事
◆
憂鬱だ。
朝起きて思った感情はそれである。
目覚めは最悪。
今日もどうせあの地雷社員さんがいると思うと朝からテンションだだ下がりである。
それでも時間は進んで行くので朝ご飯の準備と高城のお弁当の準備、真奈美を保育園へと迎えに行く準備を始める。
今日の朝ご飯はお味噌汁とトーストであるし、高城のお弁当は冷凍していた余ったおかずを解凍せずに詰め込んだだけなので準備と言えるかと聞かれれば疑問に思うレベルなのだが、それでも高城からすれば『この少しの作業すら面倒臭いと思ってしまうから自炊もお弁当も作らなくなったんだよ。そう考えれば作ってくれるだけでものすごく有難い事には変わりない』と言ってくれる。
どこまで本心で言っているか分からないのだが、そう口にしてくれるだけで嬉しく思ってしまう。
「ぴーなっつっ!ぴーなっつっ!」
そして私は真奈美様の要望通りピーナツバターを取って来てあげる。
因みに私はバターで、高城は何も着けない代わりにカフェオレで流し込みながら一気に食べる。
「じゃ、行ってきますわ」
「はいはい、行ってらっしゃい」
「らっしゃいっ!」
そして高城は朝食を食べ終えるとまるでミサイルの様に出勤して行く。
以前高城にいつもギリギリならもう少し早く起きてみたら?と聞いた事があるのだが、彼曰く『タイムアタックも兼ねているからどの道変わらないし、十分前には毎回着いているから今のままで大丈夫だ』という事らしい。
どういう事かいまいち分からないのだが、ようはここから職場まで河川敷を通って行けば信号機が一つもないルートで出勤出来るらしく、毎日その出勤時間にかかる時間を計測しているのだそうだ。
因みに休みの日は本当偶に、年三~四回程近所の山を自転車で登るタイムアタックとかもやっているらしく、今年の順位が今の所7位、総合は108位らしいと熱弁し始め、このままでは自転車の話にまで発展しそうだった為半ば強制的に話題を切り上げ高城にはこの話は禁句であると心のメモをしたものである。
最初こそまさか高城がとびっくりしたのだが十年近くも合わなかったのだ。
新しい趣味の一つや二つくらい出来ていても何らおかしな話ではないだろう。
そりゃお互い歳も取るはずだし、かたや新しい趣味も出来ればかたや結婚して子供を産んで離婚もしているはずである。
本当に、歳を取ったものだ。
そんな年寄りじみた事を思いながら私も真奈美と一緒に出勤する準備を始めるのであった。
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